「透明カメレオン」道尾秀介氏

公開日: 更新日:

「パーソナリティーを主人公にしようとしたとき、鉱石ラジオというアイテムを出して、その微弱なものが持っている力のようなものを書きたかったんです。この小説に出てくるウソは〈欺瞞〉ではなく〈虚構〉。言葉の持つ力は大きくて、たとえば、『疲れていますか?』と聞かれたときに、ぼくはいつでも『疲れていません』と答えるんですよ。『疲れているんです』と言ったら、その瞬間、本当に疲れてしまうから」

〈虚構〉と事実の関係を象徴するのが、「透明カメレオン」という奇妙なタイトルだ。恭太郎の小学生時代に“カメレオンを飼っている”同級生がいて、その同級生は、壁や床の色に同化してしまうので見えにくいが、そこにカメレオンが確かにいるのだと主張していた。

「〈透明カメレオン〉というタイトルには、存在しないものでも信じればそこに存在するんだという意味を込めています」

 作家生活10周年記念作品となるエンターテインメント小説である。(KADOKAWA 1700円+税)

▽みちお・しゅうすけ 1975年生まれ。04年「背の眼」で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞してデビュー。09年「カラスの親指」で日本推理作家協会賞、10年「光媒の花」で山本周五郎賞受賞、11年「月と蟹」で直木賞受賞。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?