著者のコラム一覧
宮城安総工作舎アートディレクター

1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。

ベンツと最新印刷技術との「出合い」

公開日: 更新日:

「なぜ、メルセデス・ベンツは選ばれるのか?」上野金太郎著

 漆器の装飾技法のひとつに「蒔絵」がある。漆器の表面に漆で絵柄を描き、乾かぬうちに金粉や銀粉を「蒔く」。漆が乾いたところで金銀の粉を払うと、絵柄が浮かび上がる。

 本書のカバーは、アルミ箔と見まがうばかりの金属光沢が印象的だ。そしてカバーの下半分を覆う「腰高の帯」は、ビジネス書でもすっかり定着した感がある。その帯に隠れるカバーのタイトル文字は白色。著者名や肩書はスミ文字でクッキリ。通常、銀色の紙に白インキやスミを刷っただけでは、ここまで文字が映えることはない。首をかしげながら、早速ルーペ片手に調べてみる。

 まず驚くのは「箔」とおぼしき光沢部分がアミ点に「分解」されていること。濃度は70%ほど。ぎらつく光沢を抑え、さらにスミ版40%のアミ点が重なる。銀面を暗く沈めることで高級感や凄みを演出、何よりタイトル=白文字を引き立てる。ちなみにこの白文字部分は銀とスミアミに対して白抜き、つまり紙白が見えている状態。心憎い計算だ。

 ところで、金属光沢といえば洋酒、たばこ、化粧品、菓子の「パッケージ」。仕事として関わることは少ないものの、日常生活を見渡すと、従来の「箔押し」以外の表面加工技術が、そこかしこに使われ始めているらしい。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  2. 2

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  3. 3

    「おまえもついて来い」星野監督は左手首骨折の俺を日本シリーズに同行させてくれた

  4. 4

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  5. 5

    巨人大ピンチ! 有原航平争奪戦は苦戦必至で投手補強「全敗」危機

  1. 6

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 7

    衝撃の新事実!「公文書に佐川氏のメールはない」と財務省が赤木雅子さんに説明

  3. 8

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 9

    高市首相が漫画セリフ引用し《いいから黙って全部俺に投資しろ!》 金融会合での“進撃のサナエ”に海外ドン引き

  5. 10

    日本ハムはシブチン球団から完全脱却!エスコン移転でカネも勝利もフトコロに…契約更改は大盤振る舞い連発