著者のコラム一覧
宮城安総工作舎アートディレクター

1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。

抑制の効いたしゃれたデザイン

公開日: 更新日:

「犬の気持ちを科学する」グレゴリー・バーンズ著

「科学読み物」「ポピュラー・サイエンス物」の装丁は難しいといわれる。このジャンルで見るべき本はないかと物色中、本書に出合う。

 カバーは真っ白なエンボス(くぼみ)加工紙。その上にポップな赤インキで1色刷り、とシンプルだ。テーマである「犬」の顔のシルエットと、同色ベタ刷りの帯が印象的(表4側、バーコードはスミ刷りゆえ正確には2色刷り)。内容にマッチしつつ付かず離れず、抑制の利いたしゃれたデザイン。科学モノ特有の「慎重で生硬な雰囲気」とは一線を画す。明朗で軽やか、「オープン」な風貌を追究した成果だろう。

 ところで、本の内容を正確に伝えることは装丁の必要条件。ただし、デザイナーにとっては単なるスタート地点だ。「論文」「報告書」など客観的事実を扱う案件には、デザイン上の危うさが付きまとう。正確さを求めるあまり、「読めれば」「間違っていなければ」いいレベル=デザイン度0に堕する誘惑だ。

「いかに魅力的に見せるか」。デザインの最重要課題を忘れた心理状態を自戒を込めて、「正しさに酔っぱらう」と呼ぶことにしている。単行本に限らず学会誌など「特定ジャンルの難しさ」の裏にはいつも「酩酊への誘惑」が潜む。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    農水省ゴリ押し「おこめ券」は完全失速…鈴木農相も「食料品全般に使える」とコメ高騰対策から逸脱の本末転倒

  3. 3

    TBS「ザ・ロイヤルファミリー」はロケ地巡礼も大盛り上がり

  4. 4

    維新の政権しがみつき戦略は破綻確実…定数削減を「改革のセンターピン」とイキった吉村代表ダサすぎる発言後退

  5. 5

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  1. 6

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  2. 7

    粗品「THE W」での“爆弾発言”が物議…「1秒も面白くなかった」「レベルの低い大会だった」「間違ったお笑い」

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  5. 10

    巨人阿部監督の“育成放棄宣言”に選手とファン絶望…ベテラン偏重、補強優先はもうウンザリ