著者のコラム一覧
宮城安総工作舎アートディレクター

1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。

圧巻のモノクロ写真に、呆然とたたずむ

公開日: 更新日:

「The Songlines」竹沢うるま著

 全352ページ中、28ページのモノクロ写真に魅せられ思わず手に取りレジに向かった。

 タイトルや外見から内容は分からない。だが、オヤなんだろうと引き込まれ、帯の「旅行記の系譜に……」というコピーから先述のモノクロ写真にたどり着き、やっと写真家による紀行文だと知れる。

 韜晦したデザイン、いや、「暗喩的な意匠」というべきか。ページを繰っていくにつれ、内容と装丁の「ズレ=距離感」が明らかになる。もちろんそれは仕組まれたものであり、本書の魅力でもある。

 写真家の文章らしく、描写力=「解像度」はすこぶる高い。現場の熱気、湿気を帯びた風や音、匂いを描き出すさまは良質なドキュメンタリー映画のよう。一方、それらを包み込む装丁は、ごくごくシンプル。青い海面を捉えた写真を表紙全面に配置。そこに厚トレのカバーが掛かる。天方向から次第に消えゆくホワイトインキは、霞か霧か。タイトルと著者名はスミ1色。カバーと表紙は付かず離れず、所々にピントが合ったりボケたり。物語るのではなく「ほのめかす」、思惑通りの効果が見て取れる。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?