「世を捨てれば楽になる」北杜夫著

公開日: 更新日:

 2011年に亡くなった著者の傑作エッセーを編んだ作品集。

 肺炎で入院生活を送ってもたばこがやめられず、何とか家にたばこを持ち込もうとする自分とそれを阻止しようとする妻との攻防。老化現象で自己抑制がきかなくなりウナギ屋にカンシャクを起こし、自分でウナギ屋を開いて「あの店をつぶしてやろうと」さえ本気で考えたという話。そして晩年の父親(斎藤茂吉)と過ごしたひと夏の思い出、など。

 老いの境地を語った章をはじめ、芥川賞を受賞した「夜と霧の隅で」の執筆に苦労した体験から身についた「シメキリ恐怖症」などの執筆奮闘記、さらに身近な家族や食にまつわる話題まで、ユーモアに包んでつづられる「マンボウ節」に心の凝りがほぐされる。(河出書房新社 780円+税)

【連載】新書あらかると

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・梅野がFA流出危機!チーム内外で波紋呼ぶ起用法…優勝M点灯も“蟻の一穴”になりかねないモチベーション低下

  2. 2

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  3. 3

    「高市早苗首相」誕生睨み復権狙い…旧安倍派幹部“オレがオレが”の露出増で主導権争いの醜悪

  4. 4

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  5. 5

    国民民主党「選挙違反疑惑」女性議員“首切り”カウントダウン…玉木代表ようやく「厳正処分」言及

  1. 6

    時効だから言うが…巨人は俺への「必ず1、2位で指名する」の“確約”を反故にした

  2. 7

    パナソニックHDが1万人削減へ…営業利益18%増4265億円の黒字でもリストラ急ぐ理由

  3. 8

    ドジャース大谷翔平が3年連続本塁打王と引き換えに更新しそうな「自己ワースト記録」

  4. 9

    デマと誹謗中傷で混乱続く兵庫県政…記者が斎藤元彦県知事に「職員、県議が萎縮」と異例の訴え

  5. 10

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず