【認知症】高齢化社会の宿命で認知症患者は増加するばかり。「治らない病気」認知症とどう向き合うか。

公開日: 更新日:

「治さなくてよい認知症」上田諭著

 認知症は治らない、治せないのが常識。しかしその思い込みが逆に人を縛るのだと説く本書の著者は、新聞記者を経て医学部に入り直し、精神科医として老人医療に取り組んできたという異色の経歴の持ち主。本書は認知症を「治さなくていい、治らなくていい」と考えよう、と呼びかける。

 家族が認知症になると「大変だ、このまま介護ばかりじゃ身がもたない」と考えがち。しかし物忘れした本人が不安や孤独に陥るのは、周囲が物忘れをとがめ、ダメなことのように扱うため。だから認知症の本人は反発し、怒り、孤独に陥るのだ。

 大事なのは「自己肯定感や自己効力感の回復」。たとえば夫の認知症で医者を訪れた老夫婦に対して、医者が妻の話をくわしく聞き、暴言や断りなしの外出などの症状をもとに薬を処方。ところが帰宅後、夫は「あの医者は自分の話をまったく聞かなかった」と言って怒り出し、薬を飲むのも拒否したという。

 そこで新たに担当した著者は妻に向かって、夫を「自分のペースに合わせようとしないこと」を勧めた。介護に苦しむ妻は最初はむっとしたが、勝手に外出してもこれまでのようにとがめず、黙ってついていくなどし始めたところ、夫が穏やかになり、生活全体の質が上がったのだ。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  2. 2

    「年賀状じまい」宣言は失礼になる? SNS《正月早々、気分が悪い》の心理と伝え方の正解

  3. 3

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  4. 4

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  5. 5

    国民民主党・玉木代表「ミッション・コンプリート」発言が大炎上→陳謝のお粗末…「年収の壁」引き上げも減税額がショボすぎる!

  1. 6

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  2. 7

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  3. 8

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  4. 9

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  5. 10

    楽天が変えたい「18番は田中将大」の印象…マエケンに積極譲渡で“背番号ロンダリング”図る