社長経験者2人の確執が招いた闇

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「東芝不正会計」今沢真著/毎日新聞出版

 東芝が冷蔵庫や洗濯機などの白物家電事業を中国の家電大手、美的集団に売却する方向で交渉していると報じられた。東芝は、優良子会社の東芝メディカルシステムズも、キヤノンに売却する方向で動いている。名門家電メーカーが、虎の子の資産を切り売りしなければならないほど追い詰められているのは、もちろん不正会計事件の影響だ。

 この事件は、大きなニュースになったので、多くの国民が覚えているだろう。私もニュースを通じて、歴代3社長が「チャレンジ」という掛け声の下、事業部門に利益の上積みを求めたことが、粉飾の原因になったのだと単純に理解していた。しかし、著者によると、不正会計の深層には、もっと深い闇が横たわっているという。

 著者は、毎日新聞のベテラン記者で、ビジネスサイト「経済プレミア」の編集長を務めている。不正会計事件を報じ続けた著者が、不正会計の背景として掲げているのは、①西田、佐々木という2人の元社長の確執②ウエスチングハウス買収に伴う「のれん」の減損処理③監査を担当した新日本監査法人のずさんな監査の3点だ。

 かつては蜜月だった西田・佐々木の元社長は、隠然たる影響力を持ち続けるなかで、公の場で非難の応酬をするほど関係が悪化していた。そこで、自らの権力を確固たるものにするために、利益の上積みを求めたのではないか。

 また、東芝が社運をかけて買収した原発企業・ウエスチングハウスの価値は、福島第1原発の事故以降、世界の原発需要が低迷するなかで、大幅に毀損していた。それを単純に決算に反映させれば、会社が存亡の危機に立たされてしまう。

 そして、異常な決算数字が出ていたのに、最大手の監査法人が著しく不当な監査をしていた。

 本書のなかで著者は断定していないのだが、2人の元社長が経済団体の幹部として、政権に近い存在だったこと、そして何より東芝が日米の原子力産業にとって不可欠の国策企業であることを考えると、不正会計事件は、一企業のレベルの問題ではないのではと思えてくる。東芝の命運は、今後の原発政策が握っているのかもしれない。

★★半(選者・森永卓郎)



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