本橋信宏
著者のコラム一覧
本橋信宏

1956年、埼玉県生まれ。早大政経学部卒。ノンフィクション、エッセー、小説など幅広く執筆中。著書に「エロ本黄金時代」「東京最後の異界 鶯谷」ほか多数。

元やくざ・俳優の安藤昇の回想録

公開日:  更新日:

「ヤクザのカリスマ」鈴木智彦著(ミリオン出版 1000円+税)

〈やっと上がってきたと思ったらパッと拳銃を構えやがって、「神妙にしろ」。ふざけるなっていうんだ。こっちはさっきから神妙にしているじゃねえか(笑)〉

 元やくざ・俳優・作家の安藤昇の回想である。

 本書はタイトル通り、戦後の大物やくざの一生と肉声を扱った熱い中身になっている。なかでも熱いのが昨年暮れ、亡くなった安藤昇だろう。

 組長という呼称は禁止、配下は社長と呼び、スーツにネクタイ着用、指詰め、入れ墨は厳禁、それまでのやくざとは異なる新手のアウトロー集団安藤組を結成した。

 本書では、実業家で乗っ取り王の異名をもつ横井英樹を安藤昇の配下が銃撃した有名な襲撃事件の舞台裏を安藤自身が回想する。

 借りた金を返そうともしない横井は、「金を返さない方法はいくらでもある」と安藤にうそぶく。一代でのし上がった横井英樹は腹の据わった強欲な実業家だった。

 私も横井の生前、強欲伝説を聞いたことがある。横井英樹関連の内装業をやったものの、なかなか代金を払ってくれず、何度も要求したところ、やっと払ってもらったという工事主がいた。

「払ってくれたのはいいけど、麻袋に1円玉詰め込んできました(苦笑)」

 メンツを潰された安藤昇は銃撃という報復にいたる。冒頭は、指名手配された安藤が刑事たちに逮捕される瞬間である。

 出所して組を解散した安藤は俳優として復活、ときにはプロデューサーとして映画にかかわる。「やくざ残酷秘録 片腕切断」(東映・1976年)では、企画・ナレーションを担当、やくざの指を詰めたり、腕が切断される衝撃的なシーンが出てくるのだが――。

〈腕の切断はやらせ〉であり、〈指を詰めるシーンは本物〉であった。

 伝説のアウトローに肉薄する、体当たり主義の著者にしか書けない新作である。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “年金博士”警鐘 支給年齢「68歳引き上げ」が意味すること

  2. 2

    早とちり小池知事…都が鑑定の“バンクシー作品”には型紙が

  3. 3

    地方は“安倍自民NO” 高知新聞「内閣支持率26%」の衝撃

  4. 4

    JOC会長を猛批判 小池知事に長男・竹田恒泰氏との“因縁”

  5. 5

    広島対策は“丸投げ”? 巨人スタッフ会議で投打コーチ言及

  6. 6

    常盤貴子「グッドワイフ」上昇のカギは美魔女の輝きと気概

  7. 7

    巨人は先発6人以外“全員中継ぎ” 勝利の方程式を追加構想

  8. 8

    年商200億円の深キョン新恋人 “ホコリだらけ”の女性遍歴

  9. 9

    ドラ1左腕も“被害者”か…岩隈加入で巨人若手が行き場失う

  10. 10

    ボールの下にバットを入れる“ホームラン打法”に対する誤解

もっと見る