TPP参加後に待ち受ける雇用崩壊と健康被害

公開日: 更新日:

 参院選を前に承認が先送りされたTPP。アメリカ大統領選挙でもTPP離脱が示唆されるなど、先行きは不透明感を増している。鈴木宣弘著「悪夢の食卓」(KADOKAWA 1300円+税)では、TPPにまつわるあらゆるデタラメについて明らかにしている。

 日本政府は一貫して「TPPはバラ色であり農業への損失は少ない」と言い張ってきたが、根拠として試算された数字はあまりにもいいかげんだ。2013年に発表された試算では、日本のGDPに与える効果を3.2兆円と推定していたが、15年の再試算では突如13.6兆円と大幅に引き上げた。

 一方、農林水産業の損失では13年試算で約3兆円と算出したが、15年には1300~2100億円にとどまると修正している。状況も対策も何も変わっていないのに、である。これほど意図が明瞭で国民をバカにした試算の修正は、過去に例がないだろう。

 アベノミクスの失敗から目をそらすため、TPPへの参加が大きなビジネスチャンスのようにも喧伝されているが、それはグローバル企業の経営陣にとっての話に過ぎない。海外投資が自由化されて人の移動が自由になったとき、賃金の高い日本人の雇用は減る運命にある。アメリカの試算では、TPP参加によって日本のGDPは0.12%低下し、雇用は7万4000人減少すると推定されているのだ。

 健康被害という大問題も残されている。TPPに参加すればアメリカからの乳製品輸入が増加するが、アメリカの乳牛には遺伝子組み換え成長ホルモン「rBST」が使われている。日本やEUでは認可されていないこのホルモン剤は、前立腺がんで4倍、乳がんで7倍も発がんリスクを高めるという論文もある。添加物の検査や表示義務も、アメリカからの輸入品に関しては“緩める”ことがすでに決まっている。

 TPPへの参加がどんな意味を持つのか、いま一度考え直す必要がある。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本ハムが新庄監督の権限剥奪 フロント主導に逆戻りで有原航平・西川遥輝の獲得にも沈黙中

  2. 2

    白鵬のつくづくトホホな短慮ぶり 相撲協会は本気で「宮城野部屋再興」を考えていた 

  3. 3

    DeNA三浦監督まさかの退団劇の舞台裏 フロントの現場介入にウンザリ、「よく5年も我慢」の声

  4. 4

    藤川阪神の日本シリーズ敗戦の内幕 「こんなチームでは勝てませんよ!」会議室で怒声が響いた

  5. 5

    佳子さま“ギリシャフィーバー”束の間「婚約内定近し」の噂…スクープ合戦の火ブタが切られた

  1. 6

    半世紀前のこの国で夢のような音楽が本当につくられていた

  2. 7

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  3. 8

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  4. 9

    田原俊彦「姉妹は塾なし」…苦しい家計を母が支えて山梨県立甲府工業高校土木科を無事卒業

  5. 10

    プロスカウトも把握 高校球界で横行するサイン盗みの実情