「山小屋主人の炉端話」工藤隆雄著
北八ケ岳・黒百合ヒュッテの主人、米川正利はやけくそ状態だった。書き入れ時のお盆に台風が近づき、客がほとんどいない。腹を立てて「ただ酒をみんなに振る舞うぞ」と言ったら、台風が来るので泊まらずに下山すると言った登山客たちが電話を貸してくれと言う。「台風で小屋に閉じ込められて帰れない」などと連絡して、下山をやめて飲み始めた。
そのうちフォークダンスを始めたが、ミシッ、ミシッ、ドドドッという音がして2階の床が落っこちた。台風の襲来かと思ったが、台風は予想のコースを外れて房総方面に抜けたという。(「踊りはきらいだ」)
山小屋の主人が語る34編の山の奇譚。(山と溪谷社 1300円+税)