「回想 私の手塚治虫」峯島正行著

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 著者は大人向け漫画雑誌の草分け的存在「週刊漫画サンデー」の初代編集長。同誌創刊時の昭和30年代には子供漫画と大人漫画とが截然と分かれていた。子供向け漫画の巨匠として名声赫々たる手塚治虫を大人漫画の世界に引っ張り込んだのが他ならぬ著者だ。本書は、あまり語られることのなかった手塚の大人漫画について詳細に描いたもの。

 大人漫画において手塚は、子供漫画では描けないエロス、ペシミズム、ニヒリズムなどを盛り込み、さらには戦争を描いた。そうして出来上がったのが、「漫画サンデー」連載の長編SF「人間ども集まれ!」他の作品だ。こうした試みは、当時、子供漫画に行き詰まりを覚えていた手塚に新たな活路を見いださせ、やがて「アドルフに告ぐ」や「ブッダ」という名作につながることが、内容の紹介と当時の手塚の心情と共に跡づけられていく。

 本書には、著者が交遊した近藤日出造や横山隆一などの漫画家たちのエピソードも紹介されており、貴重な昭和漫画史ともなっている。(山川出版社 2000円+税)

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