「花を呑む」あさのあつこ著

公開日: 更新日:

 北定町廻り同心、木暮信次郎と小間物問屋の主人、遠野屋清之介、そして木暮の手下で岡っ引きの伊佐治の3人が活躍する〈弥勒〉シリーズの最新第7作。

 油問屋、東海屋のお内儀お栄が叫び声を聞きつけて主人の五平の部屋に入ると、そこには口からボタンの花弁をあふれさせた五平の姿があった。しかも、部屋の隅には腰から下のない白いじゅばんを着た幽霊がいた。五平の妾、お宮が死んでいるのが発見されるに及び、五平から別れ話を持ち出されたお宮が自死し、その恨みで五平をとり殺したという噂が江戸の町を駆け巡る。この怪異な事件の真相に迫るべく、信次郎は伊佐治に五平の身辺を洗うよう指示する。一方、清之介は、病に侵された兄の薬代として500両を用立てることになるが、これが信次郎らの事件と結びつくことに――。

 一切の感情を排し冷徹な信次郎と、過去の闇にとらわれる清之介の緊張感のある関係がこのシリーズの要だが、本作でも2人の静かだが熾烈な心の内の戦いが繰り広げられる。(光文社 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    今オフ勃発「FA捕手大シャッフル」…侍Jの巨人・大城、SB甲斐を筆頭に中日、阪神も参戦か

    今オフ勃発「FA捕手大シャッフル」…侍Jの巨人・大城、SB甲斐を筆頭に中日、阪神も参戦か

  2. 2
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 3
    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  4. 4
    3Aでもボロボロ…藤浪晋太郎の活路を開くのは阪神復帰か? 日本ハム、オリックス移籍か

    3Aでもボロボロ…藤浪晋太郎の活路を開くのは阪神復帰か? 日本ハム、オリックス移籍か

  5. 5
    3人兄妹の末っ子だから年上と遊ぶ機会が多く、彼らと遊ぶだけの体力もあった

    3人兄妹の末っ子だから年上と遊ぶ機会が多く、彼らと遊ぶだけの体力もあった

  1. 6
    “辞めジャニ”野村義男は59歳で現役バリバリ!引く手あまたの秘訣は「第三の道」を歩んだこと

    “辞めジャニ”野村義男は59歳で現役バリバリ!引く手あまたの秘訣は「第三の道」を歩んだこと

  2. 7
    巨人・秋広が今季初昇格も阿部監督「全く期待していない」…のんきな性格がアダで早くも背水の陣

    巨人・秋広が今季初昇格も阿部監督「全く期待していない」…のんきな性格がアダで早くも背水の陣

  3. 8
    阪神・岡田監督が密かに温めていた「藤浪獲得プラン」が消滅していた…

    阪神・岡田監督が密かに温めていた「藤浪獲得プラン」が消滅していた…

  4. 9
    当時日本ハムGMだった山田正雄氏が「この性格はプロでやる上でプラスになる」と確信した決定的瞬間

    当時日本ハムGMだった山田正雄氏が「この性格はプロでやる上でプラスになる」と確信した決定的瞬間

  5. 10
    人間性やスタンスが如実に表れたMLB挑戦時の「西海岸かつ小規模都市」へのこだわり

    人間性やスタンスが如実に表れたMLB挑戦時の「西海岸かつ小規模都市」へのこだわり