香山リカさん 「壮大な宇宙の話に悩みも吹っ飛ぶ」

公開日: 更新日:

「宇宙に『終わり』はあるのか」吉田伸夫著(講談社 980円+税)

「精神科医のあなたはどうやって悩みを解決してるのか」と聞かれたら、いつも「宇宙論の本を読む」と答えてギョッとされる。宇宙のスケールは時間的、空間的に途方もなく、そこにしばし心を遊ばせているうちに、たいていの悩みは「ま、どうでもいいか」と思えて肩の力が抜けるからだ。

 その“脱力のための宇宙論”だから難解な専門書では困るのだが、最近うってつけの一冊が出た。138億年前の宇宙の誕生から現在まで、さらに100兆年よりもっと先の「10の100乗年」、すべてをのみ込んだブラックホールさえも蒸発して消え、「永遠の沈黙」が支配する宇宙の終焉がやって来る日までのことが、数式なども使わずに分かりやすくダイナミックに語られる。

 本書の読後感は2つ。「私の世俗の悩みなんてちっぽけだ」、そして「こんなスケールのデカい宇宙の中でニンゲンとして生まれたのはまぎれもない奇跡」。

 ビッグバンから38万年後にわれわれの宇宙はほぼ透明になって「晴れ上がり」と呼ばれる時期を迎えるが、本書を読み終えた頃に読者の心もすっきり晴れ上がり、息苦しさが消えていることだろう。

▽かやま・りか 1960年、北海道生まれ。立教大学現代心理学部映像身体学科教授。NHKラジオ「香山リカのココロの美容液」パーソナリティー。近著に「人生が劇的に変わるスロー思考入門」。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    映画「国宝」ブームに水を差す歌舞伎界の醜聞…人間国宝の孫が“極秘妻”に凄絶DV

  2. 2

    「時代と寝た男」加納典明(22)撮影した女性500人のうち450人と関係を持ったのは本当ですか?「それは…」

  3. 3

    慶大医学部を辞退して東大理Ⅰに進んだ菊川怜の受け身な半生…高校は国内最難関の桜蔭卒

  4. 4

    TOKIO解散劇のウラでリーダー城島茂の「キナ臭い話」に再注目も真相は闇の中へ…

  5. 5

    国分太一の不祥事からたった5日…TOKIOが電撃解散した「2つの理由」

  1. 6

    国分太一は会見ナシ“雲隠れ生活”ににじむ本心…自宅の電気は消え、元TBSの妻は近所に謝罪する事態に

  2. 7

    輸入米3万トン前倒し入札にコメ農家から悲鳴…新米の時期とモロかぶり米価下落の恐れ

  3. 8

    「ミタゾノ」松岡昌宏は旧ジャニタレたちの“鑑”? TOKIOで唯一オファーが絶えないワケ

  4. 9

    中居正広氏=フジ問題 トラブル後の『早いうちにふつうのやつね』メールの報道で事態さらに混迷

  5. 10

    くら寿司への迷惑行為 16歳少年の“悪ふざけ”が招くとてつもない代償