「大航海時代の日本人奴隷」ルシオ・デ・ソウザ、岡美穂子著
戦国時代の日本に「奴隷」とされた人々が多数存在し、ポルトガル人は南蛮貿易船で彼らをアジア、欧州まで運び人身売買を行っていた。
たとえば、日本人奴隷ガスパール・フェルナンデス(日本名は不詳)は、1577年に現在の大分県に生まれるが、8歳ごろに誘拐され長崎にいたポルトガル商人ルイ・ペレスに売られた。そして、ペレス一家と過ごすうちに語学力がつき、のちに解放されメキシコの地で自由民として生涯を終えている。
16世紀欧州では、キリスト教徒への改宗者の中にいるユダヤ人の子孫を見つけ出すための異端審問が頻繁に開かれていた。本書は審問の場に呼ばれた3人の日本人奴隷の証言記録から、彼ら日本人奴隷の人身売買の実態や暮らしぶり、さらに、歴史の流れに埋もれ人知れず生涯を終えた人々の「大航海」にも光を当てた研究書である。(中央公論新社 1400円+税)