「戦後日本のジャズ文化―映画・文学・アングラ」マイク・モラスキー著
アメリカ発祥の音楽、ジャズを切り口に、戦後日本の映画や文学を考察した文化論。
まずはジャズと日本人との歴史を概観。その上で黒沢明監督の「酔いどれ天使」と井上梅次監督の「嵐を呼ぶ男」の2本の映画を例に、日本映画の中でジャズがどのように扱われたかを論じる。酔いどれ天使では、ジャズはクラシックの「高」に対する「低」に描かれていると、黒沢監督が固執する二項対立の社会観に言及。一方、嵐を呼ぶ男に戦後日本のジャズ状況の変遷や一般の人のジャズに対する認識を垣間見る。その他、文学に登場するジャズや、日本独自の空間であるジャズ喫茶の文化空間としての多面性など、戦後の日本文化の中で反響するジャズの音色に耳を傾ける。(岩波書店 1340円+税)