「声なき人々の戦後史(上・下)」鎌田慧著、聞き手・出河雅彦

公開日: 更新日:

「成長の時代が終わっても、リスクを背負わされる人の割合はむしろ増えている。政府も企業もいまだに効率性だけを追い求めているからである。私は戦後社会の現実を、犠牲を押し付けられる側から見続け、そのような犠牲のない世の中にしたい想いでルポルタージュを書き続けてきた」(プロローグ)

 朝日新聞・青森版に2014年3月から2年間、88回にわたって長期連載された「声なき人々の側で――ルポライター鎌田慧の軌跡」をまとめたもの。対馬のカドミウム中毒を追った「隠された公害」(1970年)、むつ小川原開発計画地域を取材した「死に絶えた風景」(1971年)から、トヨタ自動車での労働体験を書いた「自動車絶望工場」(1983年)や、近著の「ルポ 下北核半島」「ドキュメント 水平を求めて」まで。まさに著者のルポライター人生50年の軌跡は、戦後の大衆運動の歴史と重なり、豊かさとは何かを問いかけてくる。

(藤原書店 各2800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    映画「国宝」ブームに水を差す歌舞伎界の醜聞…人間国宝の孫が“極秘妻”に凄絶DV

  2. 2

    「時代と寝た男」加納典明(22)撮影した女性500人のうち450人と関係を持ったのは本当ですか?「それは…」

  3. 3

    輸入米3万トン前倒し入札にコメ農家から悲鳴…新米の時期とモロかぶり米価下落の恐れ

  4. 4

    くら寿司への迷惑行為 16歳少年の“悪ふざけ”が招くとてつもない代償

  5. 5

    “やらかし俳優”吉沢亮にはやはりプロの底力あり 映画「国宝」の演技一発で挽回

  1. 6

    参院選で公明党候補“全員落選”危機の衝撃!「公明新聞」異例すぎる選挙分析の読み解き方

  2. 7

    「愛子天皇待望論」を引き出す内親王のカリスマ性…皇室史に詳しい宗教学者・島田裕巳氏が分析

  3. 8

    TOKIO解散劇のウラでリーダー城島茂の「キナ臭い話」に再注目も真相は闇の中へ…

  4. 9

    松岡&城島の謝罪で乗り切り? 国分太一コンプラ違反「説明責任」放棄と「核心に触れない」メディアを識者バッサリ

  5. 10

    慶大医学部を辞退して東大理Ⅰに進んだ菊川怜の受け身な半生…高校は国内最難関の桜蔭卒