「『なんとかする』子どもの貧困」湯浅誠氏

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「私が貧困という言葉を使い始めたのは2006年。竹中平蔵氏の『日本に貧困はない』発言に引っかかり、私が『いや、貧困はある』と言ったところから、貧困あるなし論争が起こりました。あれから約10年。09年に政府が認めたこともあり今は、『貧困はある』を前提として次のステップの話ができる。感慨深いものがありますね」

 本書は、今、社会問題となっている子供の貧困の現状、そして解決に取り組む人々の活動など、貧困解決の最前線をつづったものだ。

 現在の貧困とは、飲まず食わずの絶対的貧困ではなく、相対的貧困を指している。

 たとえば子供は進学できないけど飢えているわけではない、周囲の人が当たり前に享受していることができないという類いのもので、厚労省の発表によると子供の貧困率は、15年の段階で13.9%。全国に約280万人いるという。

「『貧困はある』が社会の前提になったとはいえ、まだまだ世間の見る目は厳しいですね。特に70、80代の男性は芋のつるを食べるような“絶対的貧困”を体験されているだけに、スマホを持っていて貧乏? などと違和感を持つ人が多い。貧困の実感は人々には届いていないと感じます」

 子供の貧困は世帯の影響を受けるため、子供だけを見ていても解決はしない。しかし大人の貧困に対しては「自己責任論」が出てくるというジレンマがあった。

「あるとき、はっと気が付いたんです。貧困に大人も子供もないのだけれど、子供を入り口に貧困全体を見ていくという方法があるじゃないかと。子供をメインにすれば、少なくとも世間から自己責任論は出てきませんから(笑い)。実際、山梨県の小学校の校長がフードバンクの資料と申請書を子供に持ち帰らせたところ、何人かの親が申請してきました」

 子供を支えると同時に保護者を含めて支援しようという活動は行政・民間問わず全国に広がりつつある。民間では学習塾や、経済的な理由で食事を満足に取れなかったり、親が忙しくてひとりで食べている子供たちに食事と居場所を提供すこども食堂などがそれだ。

「塾は行政とタッグを組んでいることが多いのですが、こども食堂は仲間が集まって始めるケースも少なくなく、地域の人たちに知られてなかったり、誤解される例も見聞きします。やりたいけど活動が進まないという地域もあり、思いが形になっていないことも多い。では、どうすればいいか。実はカギを握るのは70、80代の男性なんですね。こども食堂は地域に根差す活動ですから、自治会長やPTA会長など地域活動を経験した彼らが関わってくれると早いんです。縦横につながりがあり、コミュニケーションも取りやすい。NPOなどない地方なら、なおさらです」

 地域の力が必要なのは、子供の貧困が貧乏だけでなく、孤独とセットになっているからでもある。

「世帯収入が増えれば貧しさは解決しますが、お金があっても子供は幸せに健全に育つわけではありません。すべての子供にとって人とのつながりや居場所は必要で、それを提供できるのが地域社会なんです。最初はこども食堂で一緒に食べてみるだけでもいいんです。我々は『居るだけ支援』と呼んでいるんですが、食堂に来る子の中にはサラリーマンを初めて見た、という子供もいるんですよ。子供にとっては多様な人と出会って、価値観を増やす絶好の機会。男性にはぜひ参加してほしいですね」

 タレントのはるな愛は以前から自身が経営する店で、お笑い吉本興業は来春、沖縄でこども食堂をオープンする。1ミリでも前に進もうとする人々の熱意を伝えつつ、問題点も見据えた好著。

(KADOKAWA 800円+税)

▽ゆあさ・まこと 1969年、東京都生まれ。社会活動家、法政大学教授。08年末の年越し派遣村村長を経て、09~12年内閣府参与。著書に「ヒーローを待っていても世界は変わらない」、「反貧困」(第8回大佛次郎論壇賞、第14回平和・協同ジャーナリスト基金賞受賞)ほか多数。

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