「孤独のグルメ」は楽しいが、「孤独な暮らし」はイヤだというアナタ。それは違う、と勇気づける書が続々と書店を賑わせている。

公開日: 更新日:

「孤独がきみを強くする」 岡本太郎著

 岡本太郎といえば「芸術はバクハツだ!」で知られたあの前衛芸術家。もう20年前にこの世を去ったが、その豊富な語録の中から選りすぐった“孤独論”が本書だ。

 ページを開くと次々に飛び出してくる猛烈なコトバの数々。それは、ほとんど詩だ。

「人は誤解を恐れる。/だが、ほんとうに生きる者は、とうぜん誤解される。/誤解される分量に応じて、/その人は強く豊かなのだ。/誤解の満艦飾となって、/誇らかに華やぐべきだ」

 若いころはヘンなジイさんと思ったが、改めて読むと不思議なほど元気づけられる。

「青春は猛烈な実体だ。/俗に“若気のいたり”などと虚妄のようにかたづけたり、/浮動の状態、夢としてやりすごしてしまう。/まちがっている。/それは混濁したまま、八方に通じる道だ」

 そして「老いを認めない、そういうきっぱりした精神のノーブレスを/一方に踏まえていなければダメだ。/近代ヒューマニズムは『人はだれでも老いるのです。老後の幸せを/考えましょう』なんて猫撫で声を出す。/その安易なモラルが、人間をいよいよむなしくしていくんだよ」

 根拠なき自信? いや、この気概こそが現代の年寄りには必要不可欠なのだ。

(興陽館 1000円+税)

「『ひとりぼっち』こそが最強の生存戦略である」 名越康文著

 現代は「普通に人生を送る」だけで「疲れ果ててしまっても、まったく不思議ではない」という。職場でも友人関係でも、お互いが空気を読み合い、あうんの呼吸を交わし、ソンタクする。「分断の時代」などといわれるときは決まって、過度に分裂を避けようと日常に強い圧力がかかるのだ。

 精神科医の著者のススメは「ソロタイム」(ひとりぼっちの時間)を持つこと。「心の中の他人」の声に翻弄されず、他人を見下しも恐れもせず、ただアローン(単独)でいよう、と勧める。

(夜間飛行 1600円+税)

「孤独という名の生き方」家田荘子著

 かつて「極道の妻たち」でヒットを飛ばし、2005年に高野山大学に入学し、07年に伝法灌頂(でんぽうかんじょう)〈阿闍梨(あじゃり)の位を授かる儀式〉を経ていまや僧侶の資格を持つ著者が、お遍路や水行などの修行の経験を披露しながら、「ひとりで行をする」経験の豊かさと怖さを語る。

 滝に打たれる滝行、弘法大師のように海に入って波と対面する海行、自宅の風呂場で毎日水をかぶる禊行(みそぎぎょう)。どれも冷たく厳しいが、その厳しさこそが自分を励まし、迷いを振り切って一心不乱に祈る原動力になるようだという。

(さくら舎 1400円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人エース戸郷翔征の不振を招いた“真犯人”の実名…評論家のOB元投手コーチがバッサリ

  2. 2

    「備蓄米ブーム」が完全終了…“進次郎効果”も消滅で、店頭では大量の在庫のお寒い現状

  3. 3

    小芝風花&森川葵はナゼ外れた? 来秋朝ドラ「ばけばけ」ヒロインを髙石あかりが射止めた舞台裏

  4. 4

    オレが立浪和義にコンプレックスを抱いた深層…現役時代は一度も食事したことがなかった

  5. 5

    参政党のあきれるデタラメのゴマカシ連発…本名公表のさや氏も改憲草案ではアウトだった

  1. 6

    阿部巨人が今オフFA補強で狙うは…“複数年蹴った”中日・柳裕也と、あのオンカジ選手

  2. 7

    さや氏の過去と素顔が次々と…音楽家の夫、同志の女優、参政党シンボルの“裏の顔”

  3. 8

    参政党さや氏にドロドロ略奪婚報道の洗礼…同じく芸能界出身の三原じゅん子議員と“お騒がせ”な共通点が

  4. 9

    ドジャース大谷翔平「絶対的な発言力」でMLB球宴どころかオリンピックまで変える勢い

  5. 10

    自民党を待ち受ける大混乱…石破首相は“針のムシロ”のはずが、SNSでは〈#やめるな〉が急拡大