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「沖縄と国家」辺見庸、目取真俊著

 予想外の結果に終わった名護市長選。沖縄はどうなるのか。

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 毎週平日の朝7時から夕方の5時まで、辺野古の新基地建設現場で抗議運動をする。それが沖縄の反骨作家・目取真俊の日常。一昨年10月、座り込みの市民を強制排除した大阪府警機動隊員の「土人」発言のときも現場にいたという。本書は元ジャーナリストの一徹者として、こちらも気骨を見せる辺見庸との対論。

 一貫して流れるのは頭でっかちの反対論を排し、具体的な行為と肉体から発することばへのこだわり。

「憲法9条は条文の解釈をめぐる問題で、具体的に形のある対象に反対するものではないですから、口で唱えるだけでいいわけです。辺野古みたいに米軍基地の前で機動隊にぶん殴られて毎日排除されるのはとてもきついですよ。だけど、憲法9条で集会開いてですね、お互いに護憲を確認しているぶんには、痛くも何ともないわけです」

「日本には戦後ずっと変わらない意思というものがあるんじゃないでしょうか。日米安保は必要だけど、基地負担は自分たちのところで担いたくない(略)沖縄の反戦運動おおいにけっこう、平和運動も頑張ってください。でも、米軍が撤退するようなことが起こるまでは盛り上がらないでください、というのが、日本人の広範な願望じゃないかと」(目取真)

 この問いに即答できるヤマトゥ(大和人)はどれほどいるだろうか。(KADOKAWA 800円+税)

「『米軍が恐れた不屈の男』瀬長亀次郎の生涯」佐古忠彦著

 一昨年、TBSで放映され大評判を呼んだ番組がもとになり、劇場公開用のドキュメンタリー映画となり、そして今度は活字の書籍になった。

 島民に自決を強いた日本軍の支配からの「解放者」として現れた米軍。ところがその正体は「マングース」だった。ハブ退治のための外来種のはずが、家畜からヤンバルクイナまでの天敵になったのだ。「米軍はネコで沖縄はネズミ。ネコの許す範囲でしかネズミは遊べない」という言葉もある。そんな中で、米軍相手に毅然と主張したのが後に復帰前の那覇市長や米統治下の立法院議員を務めた「カメジロー」だった。

 本書はその生涯を「米国との対峙」の一点にしぼってたどる。佐藤政権下での本土復帰も「核抜き・本土並み」は偽りの空言だった。それを見抜いていたカメジローの眼力。「不屈」の名にふさわしい男の評伝。(講談社 1600円+税)


「沖縄のアイデンティティー」新垣毅著

 1972年の日本本土「復帰」から46年。しかし沖縄では「本土化の波」が強まるどころか、沖縄県民であることを「誇りに思う」が86・3%に達した。「うちなーんちゅ」意識が多数を占めている。

 しかし、「復帰」の前年に生まれた著者は安易に“沖縄の誇り”を説くわけではない。強烈な「うちなーんちゅ」意識は、それに対抗する「やまとんちゅ」(大和人=本土人)意識との「自他関係」の上に成り立っているからだ。明治時代の「琉球処分」から戦時中の「皇民化」、戦後の米軍支配下での「日本復帰」運動、そして現在の米軍基地問題の混迷下で「沖縄独立」をも含む新たな状況と、沖縄は幾度となく「日本」との関係で揺れ動いてきた。

 本書は難解な現代思想を次々に読破しながら徹底的に考え抜こうとする。著者は琉球新報の現役記者。新聞記者の文章は、とかく読みやすさ優先になりがちだが、本書は別格。その迫力も読みごたえあり。(高文研 1600円+税)

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