「おまじない」西加奈子著

公開日: 更新日:

炎上する君」以来、8年ぶりの短編集。キーワードは「おじさん」と「魔法の言葉=おまじない」だ。

 全8編の登場人物はいずれも訳ありの「女の子」(年齢はまちまち)で、さまざまな人生の転機に思い悩んでいる。そんな彼女たちの背中を、おじさんが魔法のひとことで、そっと背中を押してくれる――。

 初めてスカートをはいてかわいい女の子の仲間入りをするが、周囲から浮いてしまった少女と、中庭の焼却炉で何かを燃やしているおじさん(「燃やす」)。ファッションモデルの仕事に自信を失った女の子と、いちご中心に世界が回っているおじさん(「いちご」)。自分の不細工ぶりをネタにしているキャバ嬢と落ちぶれた芸人(「あねご」)。結婚したさにわざと妊娠したと思われるのではと悩む妊婦と、覚醒剤に手を出して地に落ちた元スターサッカー選手(「マタニティ」)……。

 女の子とおじさんという、およそ相いれない両者の組み合わせが、作者の魔法によって思わぬ異化効果を生み出す。著者自らの手になるイラストレーションも見どころ。

(筑摩書房 1300円+税)

【連載】ベストセラー早読み

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「U18代表に選ぶべきか、否か」…甲子園大会の裏で最後までモメた“あの投手”の処遇

  2. 2

    コカ・コーラ自販機事業に立ちはだかる前途多難…巨額減損処理で赤字転落

  3. 3

    山﨑賢人&広瀬すず破局の真偽…半同棲で仕事に支障が出始めた超人気俳優2人の「決断」とは

  4. 4

    福山雅治「ラストマン」好調維持も懸案は“髪形”か…《さすがに老けた?》のからくり

  5. 5

    永野芽郁&橋本環奈“自爆”…次世代女優トップは誰だ?畑芽育、蒔田彩珠、當真あみが三つ巴

  1. 6

    巨人・田中将大と“魔改造コーチ”の間に微妙な空気…甘言ささやく桑田二軍監督へ乗り換えていた

  2. 7

    ご都合主義!もどきの社会派や復讐劇はうんざり…本物のヒューマンドラマが見たい

  3. 8

    巨人・坂本勇人に迫る「引退」の足音…“外様”の田中将大は起死回生、来季へ延命か

  4. 9

    二階堂ふみ&カズレーザーの結婚に続くか? 広瀬すずにも囁かれる「まさか」のサプライズ

  5. 10

    福山雅治「フジ不適切会合」参加で掘り起こされた吉高由里子への“完全アウト”なセクハラ発言