「1945,鉄原」 イ・ヒョン著 梁玉順訳

公開日: 更新日:

 鉄原は朝鮮半島のほぼ真ん中にある街。

 両親を失った敬愛は、10歳で当地の大地主である黄寅甫の妾、徐華瑛の屋敷で小間使いとして働きに出た。それから5年後の1945年8月15日、日本が戦争に負け長い植民地支配から解放された。

 解放の喜びも束の間、街は混乱状態に陥っていた。親日派の黄寅甫は華瑛を連れて南の京城(現ソウル)へ逃亡、一方、寅甫の息子で敬愛の幼馴染みの基秀は共産主義運動に身を投じ鉄原に残る。敬愛の2人の姉もそれぞれ左派と右派に分かれ、まさにあちこちで骨肉の争いが繰り広げられていた。

 そんな中、鉄原地区共産党副委員長で人望の厚かった洪正斗が殺害される。この事件の真相を探るために、敬愛と基秀は越境屋の案内で38度線を越えて京城へ向かう……。

 解放直後の、南北双方の政治的思惑が入り乱れる街を舞台に、時代に翻弄されつつも生きる意味を見いだしていく朝鮮半島の若者たちの群像を描いたヤングアダルト小説。著者は現代韓国を代表する実力派作家。(影書房 2200円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “マジシャン”佐々木朗希がド軍ナインから見放される日…「自己チュー」再発には要注意

  2. 2

    石橋貴明のセクハラに芸能界のドンが一喝の過去…フジも「みなさんのおかげです」“保毛尾田保毛男”で一緒に悪ノリ

  3. 3

    佐々木朗希“大幅減速”球速160キロに届かない謎解き…米スカウトはある「変化」を指摘

  4. 4

    ヤクルト村上宗隆 復帰初戦で故障再発は“人災”か…「あれ」が誘発させた可能性

  5. 5

    清原果耶ついにスランプ脱出なるか? 坂口健太郎と“TBS火10”で再タッグ、「おかえりモネ」以来の共演に期待

  1. 6

    松嶋菜々子の“黒歴史”が石橋貴明セクハラ発覚で発掘される不憫…「完全にもらい事故」の二次被害

  2. 7

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  3. 8

    「皐月賞」あなたはもう当たっている! みんな大好き“サイン馬券”をマジメに大考察

  4. 9

    ヤクルト村上宗隆「メジャー430億円契約報道」の笑止…せいぜい「5分の1程度」と専門家

  5. 10

    常勝PL学園を築いた中村監督の野球理論は衝撃的だった…グラブのはめ方まで徹底して甲子園勝率.853