「戦時の音楽」レベッカ・マカーイ著、藤井光訳

公開日: 更新日:

 アーロンは3人の亡霊と一緒に、9本指のバイオリニスト、ラデレスクの演奏を聴いていた。亡霊は、戦争中、アーロンの父が立てこもっていた音楽学校で死んだ、女性と少年とハンガリー人だった。ラデレスクはアーロンの父の師で、ルーマニアで最も歴史のある大学で教えていた。

 戦後、共産党政権は突然、彼を投獄し、二度とバイオリンを弾けないようにするため、彼の右手の薬指を切り落とした。ラデレスクは囚人服の糸とベッドの板でバイオリンを作った。そして今夜、20年の静寂の後に、本物のバイオリンの艶のある音は彼の耳にどう響いたのか、アーロンは感じ取ろうとした。(「これ以上ひどい思い」)

 運命に翻弄された人たちを描く17編の物語。

(新潮社 2000円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  2. 2

    長嶋一茂は“バカ息子落書き騒動”を自虐ネタに解禁も…江角マキコはいま何を? 第一線復帰は?

  3. 3

    トリプル安で評価一変「サナエノリスク」に…為替への口先介入も一時しのぎ、“日本売り”は止まらない

  4. 4

    "お騒がせ元女優"江角マキコさんが長女とTikTokに登場 20歳のタイミングは芸能界デビューの布石か

  5. 5

    【独自】江角マキコが名門校との"ドロ沼訴訟"に勝訴していた!「『江角は悪』の印象操作を感じた」と本人激白

  1. 6

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  2. 7

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  3. 8

    99年シーズン途中で極度の不振…典型的ゴマすりコーチとの闘争

  4. 9

    27年度前期朝ドラ「巡るスワン」ヒロインに森田望智 役作りで腋毛を生やし…体当たりの演技の評判と恋の噂

  5. 10

    今田美桜が"あんぱん疲れ"で目黒蓮の二の舞いになる懸念…超過酷な朝ドラヒロインのスケジュール