「ウィーン栄光・黄昏・亡命」ポール・ホフマン著、持田鋼一郎訳

公開日: 更新日:

 モーツァルトやマーラーやベートーベンなどの才能あふれる音楽家や、クリムト、フロイト、さらにはヒトラーまでも引きつけた美しき都ウィーン。人々を魅了する華やかな文化を生み出したその街は、激しい歴史の変遷に翻弄された街でもあった。

 本書は、トルコ軍による包囲から、ハプスブルク帝国全盛の時代や社会民主党政権の時代を経てドイツに併合されたナチ時代、戦後の米・英・仏・ソによる占領時代、その後独立してワルトハイム大統領の時代までの約500年にわたるウィーンの街の変遷を描いた歴史書だ。歴史を追うと、ウィーンという都市の華やかな魅力と隠された危うさの両方が見えてくる。特にヒトラーを受け入れることになって以来、ウィーンのユダヤ人に降りかかった人種差別の過酷さや、ワルトハイムに代表されるナチに加担した官僚についての記述は、国家に対峙した人間の問題を指摘しており、他国のこととして片づけられない示唆を含んでいる。

(作品社 3600円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「転職者は急増」なのに「人材派遣会社は倒産」が増えているワケ

  2. 2

    俳優・山口馬木也さん「藤田まことさんは『飲め、飲め』と息子のようにかわいがってくれた」

  3. 3

    驚きの品揃え! ダイソーでほぼすべて揃う「防災グッズ」の実力は?

  4. 4

    優勝の祝儀で5000万円も タニマチに頼る“ごっつぁん体質”

  5. 5

    前代未聞の壮絶不倫・当事者のひとりがまたも“謎の欠場”…関係者が語った「心配な変化」とは???

  1. 6

    長嶋一茂はこんなにも身だしなみを意識している? VIOはもちろんアンチエイジングも

  2. 7

    大関・大の里すでに「師匠超え」の鋼メンタル!スキャンダル報道もどこ吹く風で3度目賜杯

  3. 8

    大関・大の里3度目優勝で期待される「大豊」時代の幕開け…八角理事長も横綱昇進に期待隠さず

  4. 9

    自信なくされたら困るから? 巨人・田中将大がカブス戦登板「緊急回避」の裏側

  5. 10

    国民民主党はやっぱり与党補完勢力だった! 企業・団体献金「存続」で自民党に塩を送る罪深さ