「悪魔と呼ばれた ヴァイオリニストパガニーニ伝」浦久俊彦著
その超絶技巧でヨーロッパ中を狂乱させ、「悪魔」と呼ばれたバイオリニスト、ニコロ・パガニーニ(1782~1840)の本邦初の伝記。
バイオリンが誕生して5世紀、彼に匹敵するバイオリニストは現代に至るまで、まだただのひとりも現れていないといわれる。その一方で、その人生はナポレオンの妹などの貴婦人に囲まれ、バクチと酒に溺れ、巨万の富を築きながら、病弱で干からびるように死んでいったという。生前にキリスト教会を憎悪していたため、死後に埋葬が許されず、その遺体は数十年にわたって各地をさまよったそうだ。イタリア・ジェノバの酒場でギター伴奏の父と歌手の母という「流し」の両親のもとに生まれた彼の生涯をエピソードたっぷりに描く。
(新潮社 760円+税)