脳はどのように老廃物を排出しているのか…グリア細胞と睡眠がカギ
良質で適切な時間の睡眠は頭をスッキリさせ、仕事や遊びのパフォーマンスをアップさせる。なぜか。ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師に聞いた。
私たちの体は毛細血管とリンパ管が張り巡らされ、全身の組織は細胞外液である間質液に浸されている。動脈と静脈間にある毛細血管は、そこを流れる血液中の栄養や酸素を細胞に運ぶと同時に細胞の活動で発生した老廃物や二酸化炭素などを回収する役割を果たす。 また、リンパ管は間質液に含まれる老廃物を回収する。リンパ管に入った間質液はリンパ液と呼ばれ、リンパ液に含まれた老廃物は最終的に静脈に戻る。それが腎臓や肝臓でろ過、代謝され、尿や便となって体外に排出される。これが体内で行われている基本的な老廃物の回収と排出の仕組みだ。では、脳内のゴミはどうか?
「脳には1分間に700ミリリットルもの血液が供給され、莫大なエネルギーを消費しています。その分、脳内には多くの老廃物がたまっていくのですが、脳内にはリンパ管は存在せず、脳の老廃物を排出する仕組みは長らく謎でした。2013年に米国ロチェスター大学メディカル研究チームが、睡眠中にグリア細胞が縮小し、細胞間に隙間を作ることで老廃物の排水路を形成。動脈周囲のスペースから流れ込んだ脳脊髄液が老廃物を洗い流して静脈周囲のスペースを使って脳外に排出すると報告したのです。この仕組みは『グリンパティックシステム』と命名され、深いノンレム睡眠時に集中的に働くことが明らかになっています。このとき細胞の修復・再生に欠かせない成長ホルモンの分泌も同時にピークを迎えるのです」