「山の彼方の棲息者たち」加藤博二著

公開日: 更新日:

 ある日、うっそうとした原始林で迷った著者は、屋根も周囲もクマザサでめぐらした1間ばかりの掘っ立て小屋の前に出た。意外なことに中には24、25であろう美女が住んでいた。蛇の化身かと思ったと話すと、「私には足首がござんしょう」と笑って答えた。山うなぎ(蛇の肉)の飯をもらい一晩一緒に泊まり、翌日、下山。炭焼き小屋の老爺にその話をすると、「あのべっぴんは山窩の女房だ」と。そして、泊まった小屋の立った場所は墓場で、下には亭主が埋まっていると話してくれた。

 ほかに、山深くやってくる薬売り、村の青年団を情夫にする山芸者、許されぬ恋を成就するため娘をさらい密林に逃げ込む若者たちのことなど、乗鞍岳のお花畑の番人をしていた森林官(山役人)の著者が、山奥暮らしの中で出会った人々の思い出を語った体験譚。

(河出書房新社 1450円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • BOOKSのアクセスランキング

  1. 1

    ひみつの本屋(熱海)商店街の路地で見つけた鍵を借りて入る無人本屋

  2. 2

    人生のどん底から救ってくれた保護猫と過ごした日々「キジトラのテコ」船ヶ山哲著

  3. 3

    柳原滋雄(フリージャーナリスト)なぜ中道改革連合が失敗したかに関心

  4. 4

    「フィジカルAIの衝撃『身体をもった人工知能』は2030年の世界をどう変えるか」田中道昭著/朝日新聞出版(選者:中川淳一郎)

  5. 5

    無謀な戦争の末路(1)イギリスに「東のスターリングラード」と呼ばれた激戦

  1. 6

    「沖縄を語りつぐ」川平朝清、ジョン・カビラ著│川平朝清氏の半生と沖縄への思いを長男ジョン・カビラ氏がインタビュー

  2. 7

    「米国や英国、中国の国歌は敵と戦うことを前提とした歌でいわば民衆の歌でもあったんです」──「国家と反国歌」小島岳彦氏

  3. 8

    野生動物が残したフィールドサインに注意「野生動物の痕跡図鑑」奥山英治著・写真

  4. 9

    「忘れ難い経験をしても、それを言葉にしておかないと、いつか霧のように消えてしまいます」──「刑務所の文章教室」大塚敦子氏

  5. 10

    「赤ずきんの運命、シンデレラの謎」斧原孝守著│さまざまなバリエーションがある赤ずきんの結末

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    WEST.重岡大毅の結婚にファンの怒りと落胆…“祝福されないアイドル”がやらかす「3つの誤算」

  2. 2

    巨人・阿部前監督「9月復帰」情報の真偽…読売グループ内には同情論も、懸案は…?

  3. 3

    中学時代をジャージーで過ごした鈴木奈穂子が、法政大女子高から大学に内部進学してNHK人気アナになるまで

  4. 4

    山本美月は九州の女子校で偏差値トップ「筑紫女学園」から明大農学部へ 祖父も生物教師の“リケジョ”

  5. 5

    北島三郎(4)「毎日が目標です。後ろへは戻れない」 地元・八王子のイベントで生涯現役宣言

  1. 6

    サンド伊達レギュラー14本…40~50代の芸人に仕事集中、「リスク分散」しなかった各局のダメージ度

  2. 7

    桑田真澄氏の発言が波紋 巨人の内部事情暴露のやけっぱち…来季監督の芽は完全消滅か

  3. 8

    狩野舞子は“ジャニーズのガーシー”か? WEST.中間淳太の熱愛発覚で露呈したすさまじい嫌われぶり

  4. 9

    WEST.重岡大毅の授かり婚の事後報告に“騙された”とファン激怒 あの目黒蓮も…今も難しいアイドルの結婚事情

  5. 10

    「24時間マラソン」満身創痍の星野真里が完走も…募金額46%減&ゴール直前の乱入騒動に非難の嵐