「イラストでみる 戦国時代の暮らし図鑑」小和田哲男監修

公開日: 更新日:

 群雄割拠の戦国時代、大名やその家臣らは、戦と謀略にまみれた血なまぐさい毎日を送っていたように思いがちだ。しかし、彼らにも家族があり、仕事があり、日々の暮らしがあった。

 本書は、戦国時代を生きた人たちの「暮らし」にスポットを当てて解説するイラスト図鑑。

 そもそも戦国大名とは、何者なのか。戦国大名と呼ばれるまでのプロセスは、3パターン。室町幕府に任命され、各国を統治していた「守護」が成り上がったケース。もうひとつは、在京の守護に任命され、現地の政務を代行した「守護代」から成り上がったもの。そして、国人が力を蓄えて守護の支配から脱却した在地領主のパターンだ。少し読んだだけで、あやふやだった歴史の知識が整理され、改めて納得。

 その他、「一門衆」と「譜代」「外様」と分かれる家臣団の分類や組織構成、当時の貨幣事情、同盟国の裏切りを阻止するための人質交換など、大名による内政や外交の基本をおさらい。

 その上で、ほとんどの武士は、おかずなしで主食の玄米だけを1日に5合も食べていたという食事事情や、武士の嗜みとしての衆道(男色)、武士の象徴といわれる刀が、実戦では槍や鉄砲に取って代わられ実際は補助的役割の武器だったという戦の現実、さらに戦場での負傷には傷口に小便をかけろとか、血止めには馬の糞をのめなどと非科学的治療法がまかり通っていた医療事情まで。歴史小説やドラマでは描かれない戦国時代の人々の日常の細部を伝える。

 加藤清正の死因と思われる梅毒や伊達政宗を隻眼にした天然痘など、当時の人々が苦しんだ病気や、大名・松永久秀自身が書いたというセックス指南書など。豊富なトピックスで戦国時代がぐっと身近になる歴史副読本。

 (宝島社 1100円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    【時の過ぎゆくままに】がレコ大歌唱賞に選ばれなかった沢田研二の心境

  3. 3

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  4. 4

    国分太一との協議内容を“週刊誌にリーク”と言及…日本テレビ社長会見の波紋と、噴出した疑問の声

  5. 5

    衆院定数削減「1割」で自維合意のデタラメ…支持率“独り負け”で焦る維新は政局ごっこに躍起

  1. 6

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  2. 7

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  3. 8

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 9

    立花孝志容疑者を追送検した兵庫県警の本気度 被害者ドンマッツ氏が振り返る「私人逮捕」の一部始終

  5. 10

    京浜急行電鉄×京成電鉄 空港と都心を結ぶ鉄道会社を比較