「世界植物探検の歴史」キャロリン・フライ著、甲斐理恵子訳

公開日: 更新日:

 公園や庭を彩る植物や、食卓にのぼるさまざまな野菜や果物の多くは、日本原産ではない。それらの植物は、珍しい種や香料を求めて世界各地を旅した「プラント・ハンター」と呼ばれる探検家たちが、ヨーロッパにもたらしたものだ。

 本書は、彼らプラント・ハンターたちの活躍と植物採集の物語を紹介しながら、それぞれの植物がいかに発見・採集され、新しい土地に根付き、人の暮らしを変えていったのかを解説するビジュアルブック。

 記録に残る人類最初のプラント・ハンターは、紀元前15世紀のエジプトのファラオ・ハトシェプスト。彼女の葬祭殿には、「プント国」に派遣した船が薫香木を持ち帰る様子を描いたレリーフが残されている。ミルラノキなどの薫香木の樹脂は、病気の治療薬や宗教儀式などに用いられたという。

 また、現存するヨーロッパ最古の植物学の専門書を著したギリシャの哲学者であり科学者のテオプラストスは、アレクサンダー大王に、遠征先の植物を持ち帰るよう進言したという。

 その他、植物採集を職業に変えたイギリスのトラデスカント親子をはじめ、18世紀にジェームズ・クックのエンデバー号による南太平洋航海に同行して3600種もの植物標本を持ち帰ったジョゼフ・バンクスや、日本の久留米ツツジをアメリカで披露したアーネスト・ヘンリー・ウィルソン、そして中国の茶葉産業支配を崩そうとする東インド会社に派遣され、チャノキと茶葉製造法をインドにもたらしたロバート・フォーチュンなど。世界の植生を変えたプラント・ハンターたちの功績を、250年以上の歴史を誇るイギリスのキュー王立植物園所蔵の古い植物画など多数の図版とともに紹介。身近な植物の意外な素性に好奇心が刺激されるだろう。

(原書房 3200円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    周囲にバカにされても…アンガールズ山根が無理にテレビに出たがらない理由

  2. 2

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  3. 3

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  4. 4

    永野芽郁「キャスター」視聴率2ケタ陥落危機、炎上はTBSへ飛び火…韓国人俳優も主演もとんだトバッチリ

  5. 5

    田中圭が『悪者』で永野芽郁“二股不倫”騒動はおしまいか? 家族を裏切った重い代償

  1. 6

    のんが“改名騒動”以来11年ぶり民放ドラマ出演の背景…因縁の前事務所俳優とは共演NG懸念も

  2. 7

    ダウンタウン「サブスク配信」の打算と勝算……地上波テレビ“締め出し”からの逆転はあるか?

  3. 8

    1泊3000円! 新潟県燕市のゲーセン付き格安ホテル「公楽園」に息づく“昭和の遊び心”

  4. 9

    永野芽郁と橋本環奈…"元清純派"の2人でダメージが大きいのはどっち? 二股不倫とパワハラ&キス

  5. 10

    田中圭“まさかの二股"永野芽郁の裏切りにショック?…「第2の東出昌大」で払う不倫のツケ