「楽器の音色がすぐ聴ける 世界の民族楽器図鑑」民音音楽博物館監修

公開日: 更新日:

 キューバの「キハーダ」という楽器をご存じだろうか。その正体は、「ロバの骨」そのもの。本書に収録された写真では、骨部分が赤く彩色されているが歯はそのままリアルに残っている。楽器というからには音が出るのだろうが、歯の部分を棒などでこすりつけて音を出すのかと思えば、実はあごの先端をつかみ、反対側のあごの端(つまり喉の奥側)を手のひらで叩いて演奏するのだとか。

 こうした見たことも聞いたこともないような世界各地の民族楽器を紹介・解説する写真図鑑。

 キハーダも、見ただけではどんな音が出るのか想像もできないので、実際に聴いてみる。そう、本書は楽器ごとにQRコードが添えられているのでスマホなどで読み取れば、それぞれの楽器の音色も確かめられるのだ。

 バイオリンやギターなど、お馴染みの楽器が現在の形になったのは、長い楽器の歴史の中では最近のことで、それらのルーツは民族楽器にある。

 例えば、弦楽器の始まりのひとつは、狩猟の弓に水筒代わりのヒョウタンを挟んで、矢で弓の弦を鳴らして音を出したというもので、約5000年もの歴史があるという。

 中南米の「ビリンバウ」は、その原型を色濃く残す。ブラジルでは格闘技とダンスが合体した「カポエラ」の伴奏に欠かせないものらしい。

 他にも、消音ペダルも付いた最もピアノに近い打弦楽器「ツィンバロム」(ハンガリー)や、インドの大道芸人「蛇使い」が吹くあの笛「プーンギ(ビーン)」など、珍しい世界の約100種類の民族楽器を、音が出る仕組みで分類する「ザックス=ホルンボステル分類」法に基づいて紹介する。

 楽器で世界の広さや多様さを教えてくれるおすすめ図鑑。

(河出書房新社 2250円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    冷静になれば危うさばかり…高市バブルの化けの皮がもう剥がれてきた

  2. 2

    すい臓がんの治療が成功しやすい条件…2年前に公表の日テレ菅谷大介アナは箱根旅行

  3. 3

    歪んだ「NHK愛」を育んだ生い立ち…天下のNHKに就職→自慢のキャリア強制終了で逆恨み

  4. 4

    高市首相「午前3時出勤」は日米“大はしゃぎ”会談の自業自得…維新吉村代表「野党の質問通告遅い」はフェイク

  5. 5

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  1. 6

    「戦隊ヒロイン」ゴジュウユニコーン役の今森茉耶 不倫騒動&未成年飲酒で人気シリーズ終了にミソ

  2. 7

    維新・藤田共同代表に自民党から「辞任圧力」…還流疑惑対応に加え“名刺さらし”で複雑化

  3. 8

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  4. 9

    志茂田景樹さんは「要介護5」の車イス生活に…施設は合わず、自宅で前向きな日々

  5. 10

    NHK大河「べらぼう」に最後まで東洲斎写楽が登場しないナゼ?