「バー・リバーサイド」吉村喜彦著

公開日: 更新日:

 レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」といえば、「ギムレットには早すぎる」というセリフが有名。それを言ったテリー・レノックスが探偵のフィリップ・マーロウに開けたてのバーの効用を説く場面がある。

 店の中の空気はきれいで、なにもかもがピカピカ。そんな静かなバーで飲む最初の1杯。こんな素晴らしいものはない、と。

 本書の舞台である二子玉川の「バー・リバーサイド」にも、開けたて早々のバーを楽しみに、常連客がやってくる。

【あらすじ】多摩川沿いの堤にあるバー・リバーサイドはL字形のカウンターに7席という小さなバー。カウンターの向こうのガラスには広々とした川景色が見渡せる。

 マスターの川原草太は丸刈りに長身痩躯、京都の大学で原子核の研究に携わっていたという経歴を持つ。年齢不詳だが還暦を過ぎている。

 バーテンダーの新垣琉平は清潔感漂うイケメン。毎週土曜はいつもより10分早い4時50分に店を開ける。

 というのも、毎日午前1時までうどんを打ち、4時間足らずの睡眠で頑張っているうどん屋店主・井上が1週間の仕事を終えて酒を飲むのを楽しみにしているからだ。

 井上がまず注文するのはジン・トニック。次いでライ・ウイスキーのソーダ割り、アイリッシュ・ウイスキーのストレート。合間合間にマスターと井上が、時に新垣が、ちゃちゃを入れつつ四方山話を交わしていく……。

【読みどころ】その他、フリーライターの森、台湾整体師の周女史、食べ物雑誌の編集者のサッコ、伝説のバーテンダー・兼田老師といった面々がマスターとの会話を通してさまざまな酒を酌み交わす。話の流れに合わせて酒を変えていくマスターの手際が読む者を心地良く酔わせてくれる。  <石>

(角川春樹事務所540円+税)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    上白石人気は萌歌→萌音に…女優姉妹で“逆転現象”のナゼ?

  2. 2

    尾身会長「系列病院」にコロナ患者受け入れ“後ろ向き”疑惑

  3. 3

    無能クズっぷり全国トップの吉村知事が「評価」される怖さ

  4. 4

    危機感なき菅首相に尾身会長“ブチ切れ” 会見でアテこすり

  5. 5

    東京五輪「中止」正式決定へ“秒読み”…デッドラインは2月

  6. 6

    吉岡里帆“貪欲さ”でアンチを味方に 沢尻エリカ逮捕が転機

  7. 7

    ステージ4が無実化…見捨てられた「緊急事態」5つの自治体

  8. 8

    前田敦子の全米進出に勝機 カギを握るは濃厚ベッドシーン

  9. 9

    菅首相「2月下旬から開始」ワクチン接種の甘すぎる目論見

  10. 10

    五輪選手村なぜ活用しない? コロナ感染者2日連続2千人超

もっと見る

人気キーワード