「老いてますます官能的」嵐山光三郎著

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 著者いわく、官能とは感覚的想念であり、人間のこころに本来的にそなわっている歓喜、永遠不変のリズムである。とはいえ、その中身は年齢と共に変化していく。かつては全国200余の温泉をめぐったり、東京中の古本屋を散歩したり、廃線となった鉄道の歌枕を訪ねる旅をしたりと身をもって官能を味わってきた著者だが、そうした官能の記憶は窯変し、書き換えられていく。体力が衰え、かつてできたことができなくなる。親しい友人が他界していく。すると官能が冴え、光や音や色などが澄んでくる……。

 本書には、老いてなお官能を全開にして人生を楽しんだ人たちのエピソードが登場する。延命治療をせずに理想的な人生の終わり方を成し遂げ105歳の天寿を全うした日野原重明。99歳にして個展を開く彫刻家の関頑亭。破天荒な生き方を貫いた民俗学者、南方熊楠。世間の「不倫」という指弾を浴びながら愛と欲望に忠実に生き抜いた女性たち――岡本かの子、福田英子、佐々城信子、波多野秋子、管野須賀子、宇野千代。

 つい最近、九死に一生を得たという著者だが、無事回復。新たな官能生活が始まっているようだ。

 (新講社 1400円+税)

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