「落語の種あかし」中込重明著

公開日: 更新日:

 落語のほとんどは、狂言や黄表紙、講談、外国の物語を落語化したもの。原話から落語へと作り直される際に、物語は普遍化され、その普遍化こそが聞く者に共感の笑いをもたらす。虚実が複雑に入り乱れ、謎が多い。そんな落語の名作の成り立ちの過程を明らかにする落語本。

 人情噺「芝浜」は、酒好きの怠け者の魚屋が、大金が入った財布を拾う噺。これは中国の古典「列子」の「蕉鹿の夢」の故事や元禄時代の咄本などに類話があるという。さらに著者は、夢を利用して夫をだます女房に注目して、江戸時代に既に願望は夢に現れやすいという心理学的な共通認識が人々にあったことを指摘する。

 その他、「文七元結」や「大山詣り」など文献を読み解きながら、落語の起源を明らかにしていく落語ファン必見の書。

(岩波書店 1540円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    長瀬智也が国分太一の会見めぐりSNSに“意味深”投稿連発…芸能界への未練と役者復帰の“匂わせ”

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    元TOKIO松岡昌宏に「STARTO退所→独立」報道も…1人残されたリーダー城島茂の人望が話題になるワケ

  5. 5

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  1. 6

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  2. 7

    立花孝志容疑者を追送検した兵庫県警の本気度 被害者ドンマッツ氏が振り返る「私人逮捕」の一部始終

  3. 8

    日吉マムシダニに轟いた錦織圭への歓声とタメ息…日本テニス協会はこれを新たな出発点にしてほしい

  4. 9

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  5. 10

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…