「落語小説集芝浜」山本一力著

公開日: 更新日:

 時代小説の名手が古典落語を小説化した作品集。

 鮮魚の担ぎ売りの勝治郎は、酒好きがたたって信用を落としてしまう。恋女房のおしのに泣きつかれ、心を入れ替えて半年ぶりに仕事に出かけた勝治郎は、ひょんなことから市場近くの浜辺で大金が入った財布を拾う。仕事を放り出して帰宅した勝治郎は、さっそく朝湯、朝酒。このままでは元のもくあみと心配したおしのは、一計を案じる……。

 このお馴染みの「芝浜」も、書き出しから嘉永4年の出来事と年月日を特定、夫婦が天保3年の大洪水で身内を失っているなど落語では語られない設定も細かく描かれる。その鮮やかな筆力は、分かっている「落ち」でも新たな感動を生み出す。

 ほか、「井戸の茶碗」など人情味あふれる全5演目を収録。

(小学館 650円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    もしやり直せるなら、入学しない…暴力に翻弄されたPL学園野球部の事実上の廃部状態に思うこと

  2. 2

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  3. 3

    永野芽郁は疑惑晴れずも日曜劇場「キャスター」降板回避か…田中圭・妻の出方次第という見方も

  4. 4

    巨人阿部監督が見切り発車で田中将大に「ローテ当確」出した本当の理由とは???

  5. 5

    「高島屋」の営業利益が過去最高を更新…百貨店衰退期に“独り勝ち”が続く背景

  1. 6

    かつて控えだった同級生は、わずか27歳でなぜPL学園監督になれたのか

  2. 7

    JLPGA専務理事内定が人知れず“降格”に急転!背景に“不適切発言”疑惑と見え隠れする隠蔽体質

  3. 8

    「俳優座」の精神を反故にした無茶苦茶な日本の文化行政

  4. 9

    (72)寅さんをやり込めた、とっておきの「博さん語録」

  5. 10

    第3の男?イケメン俳優が永野芽郁の"不倫記事"をリポストして物議…終わらない騒動