「お家あげます」沖田正午著
開店休業中の女優・亜矢子のLINEに美樹と名乗る人物から「お家、もらっていただけますでしょうか?」とのメッセージが届く。不審を抱く亜矢子だが、美樹が半年前に浅草の料理屋で出会った女性だと思い出す。美樹は、亜矢子の夫で時代小説家の仁一郎に気づき、声をかけてきたのだ。
美樹の祖父の清吉が仁一郎の大ファンだと話していた。家は半月前に亡くなった清吉が住んでいた家で、譲渡は清吉の遺志だという。ネットで家の画像を見た亜矢子は乗り気だが、仁一郎は半信半疑。そんな矢先、仁一郎にがんが見つかり入院手術することになった。2人は、治療費や当座の生活資金を工面するため家を手に入れたらすぐに売却しようと算段するのだが……。
時代小説家の著者が初めて挑んだ現代小説。
(実業之日本社 648円+税)