「世界史とつなげて学ぶ中国全史」岡本隆司著
中国はかつて南方の農耕地域と北方の遊牧地域に分かれていたのだが、それを統合したのがモンゴル帝国だった。だが、14世紀の寒冷化によりモンゴル帝国は解体消滅し、遊牧世界の勢力は低下する。16世紀の大航海時代になると、ヨーロッパや日本との貿易により沿岸地域が発展し、南北格差より東西格差が顕著になる。そのおかげで中国社会はますます多元化、複雑化する。
清朝政府は各地の「小さな政府」に統治を委ねたが、それでは近代に対応できなくなり、日本をモデルに「国民国家」をつくろうとした。だが、それは単一構造的な社会から生まれたシステムで、多元的な中国社会にはそぐわなかった。
現代中国の混迷と苦悩を解き明かす一冊。
(東洋経済新報社 1600円+税)