「ルポ『断絶』の日韓なぜここまで分かり合えないのか」牧野愛博著/朝日新書/2019年

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 日韓関係が悪化している背景にある構造を深く取材した優れたノンフィクションだ。特に韓国海軍に深刻な問題があるようだ。

<韓国海軍は(中略)「大洋艦隊」「大洋海軍」へのあこがれを示してきた。公式にはシーレーン防衛を念頭に、周辺海域へ進出できる大洋艦隊の編成を急ぐとしてきたが、より素晴らしい武器を持ちたいという「軍の本能」に従った行動と言えた。/ただ、韓国は北朝鮮と対峙している。韓国軍は北朝鮮軍の潜水艦を探知する能力が弱いとされ、海上テロやゲリラ攻撃などへの懸念も根強い。韓国海軍が本当に装備しなければならないのは、北朝鮮軍の海からの侵攻を防ぐために必要なフリゲート艦や小型の潜水艦などであって、航空母艦や大型の潜水艦ではない。/ここで韓国海軍は一計を案じた。「日本の海上自衛隊も持っているから、我々にも必要だ」という論理だ。(中略)韓国の政治家は歴史認識問題が起きるたびに、「朝鮮半島を再侵略しようとする日本の軍国主義の危険な現れだ」と非難してきた。また、その主張に反論しづらい空気が韓国にはある>

 当初は海軍力増強の方便だった日本への対抗意識が、ほんものに変わりつつある。このままだと偶発的武力衝突が起きる危険がある。

 教育でも韓国はかなり疲弊している。

<韓国外国語大の大学院に通う趙民周さん(27)の周囲にも、既に就職した大学時代の友人が大勢いる。(中略)企業の求人広告を見れば、ほとんどが、国際コミュニケーション英語能力テスト(TOEIC)で700点以上を求めている。友人の間では、「希望する企業に入るためには900点が必要」が不文律だった。それでも、業務で英語を使っている友人は数えるほどだという。趙さんは「英語力の必要のない企業だと軽く見られるのが嫌で、求人の条件に意味もなく英語能力を加える会社が多いんです」と教えてくれた>

 日本でも英語教育重視の方向があるが、韓国の経験から学ぶべきところが多い。語学の習得には、時間も金もかかる。仕事で本格的な英語力が求められる人以外は、高校レベルの英語の知識があれば十分と思う。

 ★★★(選者・佐藤優)

(2019年8月20日脱稿)

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