「グラビアアイドルの仕事論」倉持由香著/星海社新書

公開日: 更新日:

 私は、ラジオ番組で共演するまで、著者のことをまったく知らなかった。「普通のグラビアアイドルだな」というのが、第一印象だった。もちろん、一般人と比べたらきれいなのだが、売れっ子のグラビアアイドルは、人間とは思えないほど美しい。10万人に1人くらいの美貌がないと、一流になれない世界だ。しかも、グラビアアイドルは、若手芸人よりも厳しい経済状況に置かれる。何しろ、雑誌の表紙を飾ってもギャラはゼロという業界だ。収入は、写真集やDVDやイベントなどで稼がないといけない。だから、大部分のグラビアアイドルは、アルバイトで生計を立てている。

 ところが、著者はタワーマンションを買うほどの大成功を収めた。そのビジネスモデルが、本書のテーマだ。

 ご多分に漏れず、グラビアアイドルになった著者も、鳴かず飛ばずの貧困生活が続いた。転機は、著者のコンプレックスだったデカ尻を、むしろ売り物にすべきだとカメラマンにアドバイスされたことだった。

 それ以降、彼女は尻職人となり、ちょっとエロチックな写真をSNSに投稿し続けた。彼女のフォロワーは、どんどん増えていった。SNSへ投稿するだけでは、お金は稼げないが、著者の考える「知名度のピラミッド」はこうなっている。下層には、著者を知っているフォロワーがいる。その上の中層に雑誌や写真集を買ってくれるファンがいる。そして、その上のトップ層に、撮影会やイベントに足を運んでくれるコアなファンがいるのだ。トップ層を100人獲得するためには、1万人のフォロワーが必要となる。だから、日々努力を続けて、下層を拡大していくのだ。

 時代は変わったと思う。昔は、アイドルを作ろうと思ったら、事務所やレコード会社が総力を挙げて売り出す必要があった。当然、アイドルはごく一部の選ばれた人だけができる仕事だった。しかし、いまやSNSを活用して、自力でファンを作り出すことが可能になったのだ。

 この仕掛けは、アイドル以外の分野でも通用する。もちろん、下層を増やすのには独特のノウハウが必要だが、本書はそれを惜しげもなく公開した「ビジネス書」なのだ。

★★半(選者・森永卓郎)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希「負傷者リスト入り」待ったなし…中5日登板やはり大失敗、投手コーチとの関係も微妙

  2. 2

    朝ドラ「あんぱん」教官役の瀧内公美には脱ぎまくった過去…今クールドラマ出演者たちのプチ情報

  3. 3

    佐々木朗希「中5日登板志願」のウラにマイナー降格への怯え…ごまかし投球はまだまだ続く

  4. 4

    早期・希望退職の募集人員は前年の3倍に急増…人材不足というけれど、余剰人員の肩叩きが始まっている

  5. 5

    河合優実「あんぱん」でも“主役食い”!《リアル北島マヤ》《令和の山口百恵》が朝ドラヒロインになる日

  1. 6

    巨人秋広↔ソフトBリチャード電撃トレードの舞台裏…“問題児交換”は巨人側から提案か

  2. 7

    TBSのGP帯連ドラ「キャスター」永野芽郁と「イグナイト」三山凌輝に“同時スキャンダル”の余波

  3. 8

    キンプリが「ディズニー公認の王子様」に大抜擢…分裂後も好調の理由は“完璧なシロ”だから 

  4. 9

    永野芽郁&田中圭「終わりなき不倫騒動」で小栗旬社長の限界も露呈…自ら女性スキャンダルの過去

  5. 10

    低迷する「べらぼう」は大河歴代ワースト圏内…日曜劇場「キャスター」失速でも数字が伸びないワケ