「ルリユール」村山早紀著

公開日: 更新日:

 村上龍の「13歳のハローワーク」は、中高生の時期から自分が将来なりたい職業を考えようというもの。その公式HPには人気職業ランキングが掲載されている。1位プロスポーツ選手、2位ゲームクリエーター、3位保育士、4位看護師、5位薬剤師といった具合だ。

 本書の主人公、13歳の少女、瑠璃がなりたいのはルリユール職人。本の修復やオーダーメードの装丁を手がける職人。職業としてはマイナーであるから、先のベスト100にも入っていない。しかし、なにより本が大好きな瑠璃にとって、憧れの職業なのだ。

【あらすじ】8月も半ば近くの日曜日の午後、瑠璃は久しぶりに小さな食堂を経営している祖母の住む町にやってきた。母の妹である叔母が亡くなり、法事を行うのだ。両親も高校生の姉も忙しくて、先に瑠璃だけやって来た。しかし、祖母が経営する小さな食堂をのぞいても誰もいない。前日、階段から落ちて骨折し、近所の病院に入院していたのだ。

 ひょんなことからひと夏を祖母の町で暮らすことになった瑠璃は、そこで不思議な人物に出会う。おとぎ話に出てくるような古びた洋館に住む、赤毛のクラウディアだ。彼女は黒猫工房のルリユール職人で、彼女に頼めばどんな傷んだ本でも魔法のように蘇らせるという。噂を頼りにやって来た人たちの本を見事に修復するのを目の当たりにした瑠璃は、クラウディアに弟子入りを志願する。本が好きで手先の器用な瑠璃は、ルリユールの技術を習得していくが、クラウディアにはある秘密が隠されていた……。

【読みどころ】瑠璃もまた秘密を抱えているのだが、本を修復していくうちに自らの心の傷も修復されていく。心温まるファンタジー。 <石>

(ポプラ社 680円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「コンプラ違反」で一発退場のTOKIO国分太一…ゾロゾロと出てくる“素行の悪さ”

  2. 2

    石田ゆり子ブームは終わらない? ベリーショートに賛否、脱「奇跡の50代」でも人気加速

  3. 3

    TOKIO国分太一「コンプラ違反」秘匿も次々に“セパ報道”で窮地に…復帰は極めて困難な道のりに

  4. 4

    作新学院・小針監督の「不適切指導」に私が思うこと 批判するのが“無難”かもしれないけれど…

  5. 5

    国分太一「すぽると!」降板は当然…“最悪だった”現場の評判

  1. 6

    巨人阿部監督 グチるくらいならいっそ「4番・坂本勇人」はどうだろう…“進退の決断”含めた4つの理由

  2. 7

    国分太一コンプラ違反で「周囲が感じていた異変」…過去にはガングロに"変身”して問題起こした有名人も

  3. 8

    田原俊彦「真ん中の足」「カッチカチ」下ネタ連発で退場危機…フジ問題でも“おまいう発言”で大ヒンシュク

  4. 9

    フジ再激震! オンカジ逮捕「ぽかぽか」演出担当社員が豪語していた夢との落差にア然

  5. 10

    長嶋茂雄さんは松井秀喜の背もたれをガーンと蹴っ飛ばし、「巨人の4番道」を説いていた