「日本の路線図」宮田珠己 井上マサキ 西村まさゆき著

公開日: 更新日:

 乗り換えや他社との乗り入れなどの複雑な情報を簡潔に表現した鉄道の路線図。スマホの乗り換え案内やナビ機能が登場するまで、毎日のようにお世話になったものだ。

 各地のその路線図ばかりを集めた異色のグラフィックブックである。国内には190社を超える鉄道事業者が存在するそうだが、貨物専門や鋼索鉄道(ケーブルカー)の事業者を除いた、公共の鉄道、地下鉄、モノレール、新交通システム各社の公式な路線図を網羅。その数、47都道府県の鉄道会社149社にのぼる。

 路線図など、似たり寄ったりだと思いがちだが、ページを開いてびっくり。全国には実にさまざまな路線図があるのだ。

 例えば、青森県の「弘南鉄道・大鰐線」のそれは、各駅名の上に携帯電話の絵文字のようなシンプルなイラストが添えられており、一見すると路線図には全く見えない。「中央弘前」駅には弘前城、「松木平」駅には「清水森ナンバ」と、イラストは駅近くの名所や特産品などが描かれ、手作り感があって親しみやすい。

 千葉県の「流鉄」は、5・7キロ、6駅だけのミニ路線だが、上りと下りで路線図のイラストが異なる手の込みよう。沿線で子供が遊んだりピクニックしたりする姿が描かれたイラストがなんともほのぼのとしている。

 高知県の「土佐くろしお鉄道」の路線図はひときわ豪華。全20駅それぞれに漫画家のやなせたかし氏がデザインしたキャラクターがあり、沿線の見どころも写真入りで案内されている。

 かと思えば、鳥取県の「若桜鉄道」のように黒字に白文字で駅名が記されただけの質実剛健なものもある。

 たかが路線図、されど路線図。鉄道ファンでなくとも、次第に夢中になり、各地を旅している気分になってくる。

(三才ブックス 2500円+税)

【連載】発掘おもしろ図鑑

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  4. 4

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  5. 5

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  1. 6

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  2. 7

    豊作だった秋ドラマ!「続編」を期待したい6作 「ザ・トラベルナース」はドクターXに続く看板になる

  3. 8

    巨人・岡本和真の意中は名門ヤンキース…来オフのメジャー挑戦へ「1年残留代」込みの年俸大幅増

  4. 9

    悠仁さまは東大農学部第1次選考合格者の中にいるのか? 筑波大を受験した様子は確認されず…

  5. 10

    中山美穂さんが「愛し愛された」理由…和田アキ子、田原俊彦、芸能リポーターら数々証言