創業者ベリー・ゴーディが語るヒット曲量産の秘密

公開日: 更新日:

「メイキング・オブ・モータウン」

 戦後のベビーブーム世代にはモータウン・サウンドのファンが多い。

「初のヒップホップ大統領」といわれたオバマ前大統領も2008年選挙戦のとき、「やっぱりぼくの世代はマービン・ゲイとかがいいよね」なんて答えていた。

 その総本山の歴史をたどるのが現在公開中のドキュメンタリー「メイキング・オブ・モータウン」。

 創業者ベリー・ゴーディ・ジュニアは辣腕で鳴らした音楽プロデューサーにしてマーケット至上主義者。

 大衆の好みを先導し、ミラクルズ、フォー・トップス、スプリームス、マービン・ゲイ、ジャクソン5らをスターにする一方、所属アーティストと楽曲を徹底管理し、いくら売れても歌い手の印税は増えない搾取ボスの典型でもあった。

 映画は彼に密着インタビューし、長年副社長を務めたスモーキー・ロビンソンと懐かしいデトロイトの旧社屋を訪ねる姿で郷愁を売る。

 ゴーディは最初のレコード店経営に失敗し、地元デトロイトのフォード工場で働いた。そのときの有名なエピソード。

「流れ作業のラインに最初は車のフレームだけ。そこにあれこれ組み付けるといろんな新車になるわけだ。これぞヒットのヒケツだと思ったね」

 米国流の大量生産方式と品質管理がヒット曲量産の秘密だったのである。

 堀田典裕著「〈モータウン〉のデザイン」(名古屋大学出版会 4800円+税)は実は音楽とは無関係の自動車と産業の都市研究。しかしこれがめっぽう面白い。

 本書でいう「モータウン」はデトロイトではなく、自動車と交通システムが織りなす社会環境のこと。トヨタや日産の組立工場の話から自動車の技術を転用した量産住宅、高速道路、物流センター、ショールームやショッピングモールまでが論じられる。建築学と技術史、経営学などを横断した野心作だ。 <生井英考>

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元横綱・三重ノ海剛司さんは邸宅で毎日のんびりの日々 今の時代の「弟子を育てる」難しさも語る

  2. 2

    巨人・岡本和真を直撃「メジャー挑戦組が“辞退”する中、侍J強化試合になぜ出場?」

  3. 3

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  4. 4

    高市政権大ピンチ! 林芳正総務相の「政治とカネ」疑惑が拡大…ナゾの「ポスター維持管理費」が新たな火種に

  5. 5

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  1. 6

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 7

    沢口靖子vs天海祐希「アラ還女優」対決…米倉涼子“失脚”でテレ朝が選ぶのは? 

  3. 8

    矢沢永吉&甲斐よしひろ“70代レジェンド”に東京の夜が熱狂!鈴木京香もうっとりの裏で「残る不安」

  4. 9

    【独自】自維連立のキーマン 遠藤敬首相補佐官に企業からの違法な寄付疑惑浮上

  5. 10

    高市政権マッ青! 連立の“急所”維新「藤田ショック」は幕引き不能…橋下徹氏の“連続口撃”が追い打ち