「落葉の記」勝目梓著

公開日: 更新日:

 伸子が留守の間に猫のクロベエが死んだ。実家に帰った伸子に知らせたら、月に一度の母親孝行が上の空になると思って知らせなかった。使い古しのタオルにくるんで、クロベエを庭の隅の楓の下に埋めた。漬物桶の枠板に「クロベエの墓」と書いて、漬物石を墓石代わりに載せた。

 帰宅した伸子にクロベエの死を告げると、伸子は玄関マットの上にうずくまって泣きじゃくった。クロベエを埋葬したことを告げると、43年の結婚生活で見たことのない、凄まじい怒りと恨みと難詰の籠もった目でにらみつけた。「なんてことするの、人でなし」と言って、仏壇から線香を持ってきて庭に出た。(「落葉日記」)

 勝目が亡くなる前日まで執筆した最後の作品集。

(文藝春秋 2000円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    映画「国宝」ブームに水を差す歌舞伎界の醜聞…人間国宝の孫が“極秘妻”に凄絶DV

  2. 2

    「時代と寝た男」加納典明(22)撮影した女性500人のうち450人と関係を持ったのは本当ですか?「それは…」

  3. 3

    慶大医学部を辞退して東大理Ⅰに進んだ菊川怜の受け身な半生…高校は国内最難関の桜蔭卒

  4. 4

    TOKIO解散劇のウラでリーダー城島茂の「キナ臭い話」に再注目も真相は闇の中へ…

  5. 5

    国分太一の不祥事からたった5日…TOKIOが電撃解散した「2つの理由」

  1. 6

    国分太一は会見ナシ“雲隠れ生活”ににじむ本心…自宅の電気は消え、元TBSの妻は近所に謝罪する事態に

  2. 7

    輸入米3万トン前倒し入札にコメ農家から悲鳴…新米の時期とモロかぶり米価下落の恐れ

  3. 8

    「ミタゾノ」松岡昌宏は旧ジャニタレたちの“鑑”? TOKIOで唯一オファーが絶えないワケ

  4. 9

    中居正広氏=フジ問題 トラブル後の『早いうちにふつうのやつね』メールの報道で事態さらに混迷

  5. 10

    くら寿司への迷惑行為 16歳少年の“悪ふざけ”が招くとてつもない代償