「アンブレイカブル」柳広司著

公開日: 更新日:

 昭和2年の金融恐慌で日本経済がどん底不況に陥っていた頃、谷勝巳は蟹工船で一緒だった萩原純彦と、クロサキと名乗る男に声をかけられた。クロサキは内務省の役人だと言い、身元は特高の赤尾に問い合わせるよう言って、萩原を怯えさせた。

 クロサキは萩原と谷に、プロレタリア作家の小林多喜二に会うように指示した。多喜二は次の作品のために、昨シーズン蟹工船に乗った者に取材しようとしていた。「拓殖銀行小樽支店調査係」の名刺を出した多喜二に、谷は「なして、あっただ地獄に興味があんだべ?」と尋ねた。(「雲雀」)

 他に哲学者の三木清ら、治安維持法で罪状を捏造されながら官憲と闘った、敗れざる男たちの軌跡。

(KADOKAWA 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  2. 2

    帝釈天から始まる「TOKYOタクシー」は「男はつらいよ」ファンが歩んだ歴史をかみしめる作品

  3. 3

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  4. 4

    高市政権の物価高対策はもう“手遅れ”…日銀「12月利上げ」でも円安・インフレ抑制は望み薄

  5. 5

    立川志らく、山里亮太、杉村太蔵が…テレビが高市首相をこぞってヨイショするイヤ~な時代

  1. 6

    (5)「名古屋-品川」開通は2040年代半ば…「大阪延伸」は今世紀絶望

  2. 7

    森七菜の出演作にハズレなし! 岡山天音「ひらやすみ」で《ダサめの美大生》好演&評価爆上がり

  3. 8

    小池都知事が定例会見で“都税収奪”にブチ切れた! 高市官邸とのバトル激化必至

  4. 9

    西武の生え抜き源田&外崎が崖っぷち…FA補強連発で「出番減少は避けられない」の見立て

  5. 10

    匂わせか、偶然か…Travis Japan松田元太と前田敦子の《お揃い》疑惑にファンがザワつく微妙なワケ