男たちを手玉に取る小悪魔ぶりが今回も話題

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「カトリーヌ・スパーク レトロスペクティブ」

 演芸場や劇場は営業再開を許可したのに映画館は休業という東京都の方針に、映画界から強い不満の声が出ている。一方、単館系ミニシアターでは制限下で知恵を絞って「通」の目を引く企画が目立つ。

 たとえば昨年のいまごろ連日大入りとなった「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」は第2弾が新宿で現在公開中。今後のラインアップではベルモンドがナチスと戦う日本初公開の「エースの中のエース」や48年ぶりの劇場公開作「相続人」などがうれしい。

 他方、先週末に渋谷で始まった「カトリーヌ・スパーク レトロスペクティブ」。フランスの劇作家や詩人、女優などの一家に生まれ、60年代にイタリアでデビューするや、たちまちアイドルとなったカトリーヌ・スパークの代表作4本の回顧上映だ。

「狂ったバカンス」「禁じられた抱擁」で男たちを手玉に取る小悪魔ぶりが今回も話題だが、筆者自身は中学時代に見た「女性上位時代」に五十数年ぶり(!)に再会するのが感慨深い。

 そういえば同じころ大人気だった「アイドルを探せ」のシルヴィ・バルタンや日本の加賀まりこはスパークと同世代だが、今回上映の「太陽の下の18才」の水着姿を見ると、「小悪魔」というにはあまりに華奢な体つきにハッとする。なんというか、現代のアイドル少女たちの商品化された肉体とは違う、てらいのない可憐さに彩られているのだ。そんな発見も映画館のスクリーンならではの話だろう。

 映画「蜘蛛女のキス」の原作で知られたアルゼンチンの作家マヌエル・プイグは若いころローマの撮影所で映画監督を志したという通人。晩年、イタリア語で書いた短編集「グレタ・ガルボの眼」(堤康徳訳 青土社 2090円)は「フィクションという形をとった映画名作選」(訳者あとがき)だ。やはり映画は、銀幕でこそ花開く一夜の夢である。 <生井英考>

【連載】シネマの本棚

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