「流転の中将」奥山景布子著

公開日: 更新日:

 桑名藩主であり、左近衛権中将の官位も持つ松平定敬(さだあき)は、徳川慶喜の呼び出しを受け、決戦を決めたのだと思った。ところが慶喜はこう言った。「余はこれからここを脱出する」。そして定敬に随行するよう命じたのだ。

 慶喜の一行は大坂城を抜け出す。船着き場で待っていたのは幕府の軍備に協力していたフランスではなく、アメリカの砲艦イロクォイ号だった。イロクォイ号のボートで開陽丸に乗り移った一行は江戸に向かう。朝廷からは「徳川慶喜追討令」が出されていた。江戸城に到着した定敬は何度も求めていた対面がようやくかなうが、慶喜は「余は武力をもって戦う気など一度もなかった」と言い放つ。

「朝敵」とされながらも徳川家に尽くした藩主を描く。

(PHP研究所 1980円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    世良公則氏やラサール石井氏らが“古希目前”で参院選出馬のナゼ…カネと名誉よりも大きな「ある理由」

  2. 2

    新横綱・大の里の筆頭対抗馬は“あの力士”…過去戦績は6勝2敗、幕内の土俵で唯一勝ち越し

  3. 3

    年収1億円の大人気コスプレーヤーえなこが“9年間自分を支えてくれた存在”をたった4文字で表現

  4. 4

    浜田省吾の父親が「生き地獄」の広島に向ったA.A.B.から80年

  5. 5

    山尾志桜里氏は出馬会見翌日に公認取り消し…今井絵理子、生稲晃子…“芸能界出身”女性政治家の醜聞と凄まじい嫌われぶり

  1. 6

    「徹子の部屋」「オールナイトニッポン」に出演…三笠宮家の彬子女王が皇室史を変えたワケ

  2. 7

    “お荷物”佐々木朗希のマイナー落ちはド軍にとっても“好都合”の理由とは?

  3. 8

    ドジャース佐々木朗希 球団内で「不純物認定」は時間の問題?

  4. 9

    くら寿司への迷惑行為 16歳少年の“悪ふざけ”が招くとてつもない代償

  5. 10

    フジ親会社・金光修前社長の呆れた二枚舌…会長職辞退も「有酬アドバイザー」就任の不可解