「流転の中将」奥山景布子著

公開日: 更新日:

 桑名藩主であり、左近衛権中将の官位も持つ松平定敬(さだあき)は、徳川慶喜の呼び出しを受け、決戦を決めたのだと思った。ところが慶喜はこう言った。「余はこれからここを脱出する」。そして定敬に随行するよう命じたのだ。

 慶喜の一行は大坂城を抜け出す。船着き場で待っていたのは幕府の軍備に協力していたフランスではなく、アメリカの砲艦イロクォイ号だった。イロクォイ号のボートで開陽丸に乗り移った一行は江戸に向かう。朝廷からは「徳川慶喜追討令」が出されていた。江戸城に到着した定敬は何度も求めていた対面がようやくかなうが、慶喜は「余は武力をもって戦う気など一度もなかった」と言い放つ。

「朝敵」とされながらも徳川家に尽くした藩主を描く。

(PHP研究所 1980円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  2. 2

    「年賀状じまい」宣言は失礼になる? SNS《正月早々、気分が悪い》の心理と伝え方の正解

  3. 3

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  4. 4

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  5. 5

    国民民主党・玉木代表「ミッション・コンプリート」発言が大炎上→陳謝のお粗末…「年収の壁」引き上げも減税額がショボすぎる!

  1. 6

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  2. 7

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  3. 8

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  4. 9

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  5. 10

    楽天が変えたい「18番は田中将大」の印象…マエケンに積極譲渡で“背番号ロンダリング”図る