「コーヒーで読み解くSDGs」José.川島良彰ほか著

公開日: 更新日:

 環境や経済、社会に関わる17の目標を掲げるSDGs。これらの目標は、SDGsが生まれる以前から、コーヒー業界が取り組んできた課題の縮図でもある。本書では、コーヒーを題材にSDGsをひもときながら、身近なコーヒーを通じて誰もがSDGsに貢献できることを教えてくれる。

 SDGsの4番目の目標である「質の高い教育をみんなに」。コーヒーの栽培適地には辺鄙な山岳地帯もあり、コーヒー農園労働者の子供たちは何時間もかけて街の学校まで徒歩で通うケースが多い。これはまだよい方で、通学路には誘拐などの危険がある治安の悪い場所もあり、学校を諦めて農園の仕事を手伝う子供も少なくない。

 またコーヒー農園は2~4カ月の短い収穫期に多くの労働力を必要とするため、季節労働者が雇われる。その子供たちは親と一緒に農園を転々とするため、教育を受ける機会を確保するのは容易ではないという現実がある。子供の教育を犠牲にして栽培されたコーヒーを飲んで、あなたは心からおいしいと言えるだろうか。

 実はこのような課題を解決すべく、取り組みを始めているコーヒー農園もある。例えば、パナマの農園では労働者としてやってくる先住民族ノーベ族の子供のために家庭教師を雇い、農園の一角に教育の場を設けている。またグアテマラのサン・セバスティアン農園では労働者に感謝し、その子供たちに教育を行う学校を運営。グアテマラ教育省が定めた必修科目に加え、音楽やコンピューターなどの教育も取り入れているという。

 あなたが口にするコーヒーはどうやって作られたのか。そのことを知ればコーヒー選びも変わり、SDGsへの貢献につながるのだ。

(ポプラ社 1870円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  3. 3

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  4. 4

    日吉マムシダニに轟いた錦織圭への歓声とタメ息…日本テニス協会はこれを新たな出発点にしてほしい

  5. 5

    巨人正捕手は岸田を筆頭に、甲斐と山瀬が争う構図…ほぼ“出番消失”小林誠司&大城卓三の末路

  1. 6

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  2. 7

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    「ばけばけ」苦戦は佐藤浩市の息子で3世俳優・寛一郎のパンチ力不足が一因