「多様な社会はなぜ難しいか」水無田気流著

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 SDGsの17の目標のなかにも示されている「ジェンダー平等」。ところが、男女格差を示すジェンダーギャップが日本は非常に大きく、2021年3月時点で日本は156カ国中120位。G7でも最低の水準だ。

 企業で盛んに「ダイバーシティ」をうたっても、管理職に占める女性割合は14・9%と極めて低い。本書では、ダイバーシティの進まない日本の現状や、コロナ禍で浮き彫りになった日本の不寛容についても考察している。

 2020年10月の東京都医師会定例記者会見で、国内自殺者数が若年層と女性で急増したと報告された。40歳未満では男性も前年比31・4%増だが、女性に至っては76・6%の大幅増だ。観光・宿泊・飲食など「非正規女性職員」の多い業種の休業や減収が相次いだことや、自粛生活で女性が家族のケアを抱え込んだ点などが要因と考えられる。「女性活躍」や「女性が輝く社会」など“いいとこどり”の政策を推し進めてきたものの、新型コロナによってその綻びがあらわになったわけだ。

 日本人の多くはダイバーシティについての理解が浅く、さらに権力者ほど本音ではそれを敬遠し、許容するフリをして深い議論を避けてきた。その結果、近年中高年の結婚のあり方にも静かな異変が起きている。ひとつは、夫の定年退職を機に妻から提案される「卒婚」で、離婚はしないがお互いの生き方を尊重し“結婚”というパッケージから自由になること。そして夫の死後に夫の親族と法的関係を断つ「死後離婚」だ。女性に一方的に強いてきた忍耐が限界に達していることの表れだと本書。

 不寛容な社会は、実は誰にとっても生きにくい。今こそダイバーシティの本質について考えるときだ。

(日本経済新聞出版 1650円)

【連載】ポストコロナの道標 SDGs本

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