「日本が壊れる前に」中村淳彦、藤井達夫著

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 SDGsが達成しようとする17の目標の中の「貧困をなくそう」。実は日本でも、とくに女性の貧困が大きな社会問題となっている。本書では、風俗などの現場を取材してきたノンフィクションライターと政治学者という2人の著者が、対談形式で現代日本の貧困を解説。次に貧困のターゲットとなる中年男性の危機的状況についても分析している。

 日本の貧困問題を考えるとき必ず行き当たるのが「ネオリベ(ネオリベラリズム=新自由主義)」の社会構造であるという。これは、緊縮財政や規制緩和、自己責任など、平成の半ばから日本の政治が徹底してきたことだ。そして、競争一辺倒で社会保障を縮小するネオリベ的な政治は必ず敗者を生むが、その受け皿のひとつとなっていたのが性産業だった。これがある意味女性のセーフティーネットとして機能し、社会を一見平穏に回してきた側面があると本書。

 ところが、新型コロナはその脆弱性を突いてきた。脆弱な層というと生活保護受給者が浮かびがちだが、彼らは一応、国の保護を受けている。一方、性産業従事者には何の保護もなく雇用自体が不安定で、貧困と隣り合わせであることがコロナ禍で露呈したのだ。

 著者らは、これからネオリベがつくり出す貧困のあおりを受けるのが、中年男性だと指摘する。彼らには女性のように風俗で働く道もなく、失職者の受け皿となる介護現場でも使いものにならない。菅首相が掲げた社会像の自助には限界があり、共助からも排除され、ネオリベによって公助もないとなると、命の問題になってくることを認識せざるを得なくなる。貧困が誰にもごく身近なものになりつつあることに、早く気付くべきだ。

(亜紀書房 1540円)

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