「バイオプラの教科書」小松道男著

公開日: 更新日:

 温室効果ガスの発生原因のひとつに、プラスチック廃棄物の燃焼処理によるCO2放出が挙げられる。また、プラスチック廃棄物は海の環境にも悪影響を及ぼす。紫外線により劣化し5ミリ以下の粒となったマイクロプラスチックは、発がん性物質でもあるポリ塩化ビフェニルを吸着しやすい。これを小魚がプランクトンと間違えて捕食し、小魚をマグロやカツオが捕食して有害物質が蓄積されれば、人間への健康被害も懸念される。

 そこで本書では、近年注目されているバイオマス由来で生分解性のバイオプラスチックについて解説。その製造技術や世界の使用状況などを、初心者にも分かりやすく教えてくれる。

 トウモロコシやサトウキビを原材料とし、乳酸菌を混ぜて発酵させるなどの工程を経てできあがるバイオプラスチック。使用後は生分解してCO2を放出するが、そもそもの炭素は原材料が成長過程で吸収していた分量と相殺されるため、大気中のCO2は差し引きゼロ。カーボンニュートラルと言えるわけだ。

 すでにさまざまな場面で導入が始まっている。例えば、マシンにセットするタイプのコーヒーカプセルだ。世界で1日に飲まれるコーヒーの量は膨大なものだが、カプセルが生分解性のバイオプラスチックに置き換えられることで、環境への負荷軽減につながる。日本ではレジ袋が有料化されているが、欧州ではバイオプラスチック製のレジ袋の採用が進み、ゴミ袋や包装フィルムにも用途が広がっている。

 生産コストの削減や、消費者が従来製品と識別しやすい表示方法の工夫、フェイク製品の排除など、課題についても言及する本書。バイオプラスチックを一から知ることのできる教科書だ。

(日経BP 2970円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  3. 3

    「おこめ券」迫られる軌道修正…自治体首長から強烈批判、鈴木農相の地元山形も「NO」突き付け

  4. 4

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった

  5. 5

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  1. 6

    12月でも被害・出没続々…クマが冬眠できない事情と、する必要がなくなった理由

  2. 7

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  3. 8

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  4. 9

    黄川田地方創生相が高市政権の“弱点”に急浮上…予算委でグダグダ答弁連発、突如ニヤつく超KYぶり

  5. 10

    2025年のヒロイン今田美桜&河合優実の「あんぱん」人気コンビに暗雲…来年の活躍危惧の見通しも