「明治伏魔殿」野口武彦著

公開日: 更新日:

 江戸から明治へと日本が大きな変わり目を迎えたとき、歴史に名を残した人はもちろん、時代の過渡期に居合わせた名もなき庶民にも多くの変化が訪れた。本書は、想定外の変化に遭遇した人々が体験したかもしれない5つの物語「崩し将棋」「明治天皇の馭者」「巷説銀座煉瓦街」「陰刻銅版画師」「粟田口の女」を収録した短編小説集だ。

 冒頭の「崩し将棋」は、上野で茶屋を営む「蓮饅頭」の15歳の娘・お駒を中心とする子どもたちが主人公。明治になって大総督府から新しい鑑札を受けないと商売を続けられなくなったお駒の父親が、お駒を妾奉公に出すことを決めてしまったため、お駒を慕う上野っ子たちは事態に反発。日頃のいたずらぶりを発揮して彰義隊に加勢したものの、官軍は予想外の攻撃を用意していた……。

 文中「東叡山戦記」「佐賀藩銃砲沿革史」「史談会速記録」などの歴史資料を裏付けにした記述が、各地であり得たかもしれない物語にリアリティーを感じさせる。

 封建国家から近代国家への急激な変革を果たした明治日本の混乱と混沌(こんとん)が、変化続きの昨今の日本の姿にも重なって見えてくる。

(講談社 2310円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高市首相が自衛隊派遣めぐり安倍側近と壮絶バトル→「クビ切り宣言」の恐るべき暴走ぶり “粛清連発”も画策か

  2. 2

    世界陸上マラソンで金メダル谷口浩美さんは年金もらい、炊事洗濯の私生活。通学路の旗振り当番も日課に

  3. 3

    九州国際大付野球部で暴力事件 楠城監督が日刊ゲンダイに明かした「不祥事」への言い分

  4. 4

    駐車トラブルの柏原崇 畑野浩子と離婚

  5. 5

    江角マキコさん「落書き騒動の真相」を初めて語る…人気YouTuberの配信に抗議

  1. 6

    クビになってからの逃避行 ミニカーファンの同志30人とエコノミーでドイツへ飛んだ

  2. 7

    元横綱照ノ富士「暴行事件」の一因に“大嫌いな白鵬” 2人の壮絶因縁に注目集まる

  3. 8

    石油備蓄に奇妙な“二重基準”…1日の消費量が日本政府は「176万バレル」で国際基準は「336万バレル」のナゼ

  4. 9

    レベルの低い“寄せ集め集団”を見渡し、失った自信を取り戻した感覚があった

  5. 10

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった