「月の光の届く距離」宇佐美まこと著

公開日: 更新日:

 都立高校に通う平凡な女子高生・美優は2年生の春、妊娠した。同級生の恋人・准也に告げると逃げ腰になり、両親は美優を罵倒。家を追い出された美優は、池袋で知り合った曜子に仕事を紹介され新宿・歌舞伎町に出向くが、そこは妊婦もOKの風俗だった。

 店を飛び出したあと美優は、偶然にNPOを運営する千沙と出会い、彼女の勧めで奥多摩にあるゲストハウス「グリーンゲイブルズ」で働きながら出産に備えることになる。そこでは明良と華南子の兄妹が、家庭環境に恵まれない子どもの里親をしながら、認知症初期の母・類子と共に暮らしていた。

 美優はグリーンゲイブルズで暮らすうちに類子が世界的デザイナーだったこと、明良と華南子には事情がありそうなこと、そして自分を助けてくれた千沙は幼い頃、児童ポルノのモデルにされていたことを知る。

 話題作「展望塔のラプンツェル」に続く、家族の在り方を問う長編ミステリー。

 里子たちの背景にある虐待や貧困、夜の街を徘徊(はいかい)する子どもたちの家庭事情、明良の壮絶な過去など、子どもたちを巡る社会問題を浮き彫りにしながら、さまざまな家族の形を描き出す。果たして美優が赤ん坊のために選んだ“月の光の距離”とは──。

(光文社 1870円)


【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2
    大谷2戦連続6号弾 先輩の雄星も驚く「鈍感力」発揮!名門球団の重圧や水原問題もどこ吹く風

    大谷2戦連続6号弾 先輩の雄星も驚く「鈍感力」発揮!名門球団の重圧や水原問題もどこ吹く風

  3. 3
    長渕剛が誹謗中傷に《具合が悪い》と告白…《話があるなら、来てほしい》と性被害告発の元女優に呼びかけ

    長渕剛が誹謗中傷に《具合が悪い》と告白…《話があるなら、来てほしい》と性被害告発の元女優に呼びかけ

  4. 4
    松本人志に文春と和解の噂も、振り上げた拳は下ろせるか? 告発女性の素性がSNSで暴露され…

    松本人志に文春と和解の噂も、振り上げた拳は下ろせるか? 告発女性の素性がSNSで暴露され…

  5. 5
    松本人志“性的トラブル報道”へのコメント 優木まおみが称賛され、指原莉乃が叩かれるワケ

    松本人志“性的トラブル報道”へのコメント 優木まおみが称賛され、指原莉乃が叩かれるワケ

  1. 6
    広末涼子“不倫ラブレター”の「きもちくしてくれて」がヤリ玉に…《一応早稲田だよな?》

    広末涼子“不倫ラブレター”の「きもちくしてくれて」がヤリ玉に…《一応早稲田だよな?》

  2. 7
    佐々木朗希にメジャー球団は前のめりも…ロッテ首脳陣が依然として計算できない脆弱ボディー

    佐々木朗希にメジャー球団は前のめりも…ロッテ首脳陣が依然として計算できない脆弱ボディー

  3. 8
    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前

    巨人の得点圏打率.186は12球団最低…チャンスに滅法弱く、立場が危うくなった打者3人の名前

  4. 9
    阪神・岡田監督ようやく取材解禁の舞台裏 もう怖いものなし?今後の報道に忖度生じる可能性

    阪神・岡田監督ようやく取材解禁の舞台裏 もう怖いものなし?今後の報道に忖度生じる可能性

  5. 10
    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異

    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異